柏レイソルが「小柄なダイナモ」の活躍で今季初勝利も昨季の繰り返しになりかねない (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Maiki

「選手が今日の試合の重要性を感じ、結果を残さなければいけないと、非常に試合の入りが硬かった」

 試合後、ネルシーニョ監督がそう振り返っていたように、立ち上がりの柏は慎重にプレーしようとするあまり、縦にボールを入れられる場面でも横パスやバックパスに逃げ、挙句にミスが起こるなど、効果的な攻撃につなげられないケースが目についた。

 だが、そんな悪い流れを変えたのが、小柄な背番号28だった。

 自陣深くまで押し込まれた場面でも、セカンドボールを拾った戸嶋は、簡単にクリアで逃げることなくボールをキープして時間を作り、細谷の動き出しを待ってロングボールを送る。また、中盤でパスを受けた時には、自ら前方へとボールを持ち出し、敵陣へと進入していく。そんなシーンが少なくなかった。

 止まって次の受け手を探せば、相手のプレスバックの餌食になることもあっただろう。だが、戸嶋は決して足を止めず、ボールを運ぶことで相手のプレッシャーをかわし、次の選択肢を探っていた。

 必ずしも攻撃がスムーズに進んでいなかった柏にあって、このちょっとしたプレーが大きな意味を持っていた。

 細谷の決勝点にしても、鹿島のクリアを戸嶋が拾ったところから、わずか2本のパスでゴールが完結。戸嶋のプレー選択が、いかに有効だったかの証明である。

 こういう気の利いた選手がいるチームは強い――。個人的に選ばせてもらうなら、この試合のマン・オブ・ザ・マッチは、文句なしで戸嶋だ。

 そんなダイナモの活躍もあって、ようやく手にした今季初勝利。順位もひとつ上がり、最下位脱出に成功した。

 とはいえ、まだ1勝しただけの柏を取り巻く状況は、依然として厳しい。

 思えば、昨季の柏はスタートダッシュに成功しながら、時間の経過とともに勢いを失っていった。前述したようにJ1第24節を最後に勝利がなく、シーズンのラスト10試合は5敗5分け。7位という最終順位にはそぐわない、あまりに寂しい幕引きだった。

 その間、戦い方も試行錯誤の繰り返し。シーズン序盤に威力を発揮したハイプレスは影を潜め、引いて守ってカウンターを狙うような戦い方も目についた。

 だからこそ、今季は新たな挑戦に着手したはずだった。

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