横浜F・マリノスの底力を象徴した2年目のルーキー山根陸 慣れない新ポジションで一発回答

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 4月8日、横浜。横浜F・マリノスは本拠地に今シーズンJ2から昇格した横浜FCを迎えている。2年ぶりの横浜ダービーで、雨の中ながら2万5000人以上のファン・サポーターが詰めかけた。

 結果から言えば、Jリーグ王者である横浜FMの強さが際立ち、5-0で大勝を収めている。

「山根(陸)、ヤン(・マテウス)、井上(健太)......今は誰が出ても違いが出せる戦いはできている。チーム内に激しい競争があります。(監督としては)選手たちそれぞれの力を落とさず、やっていくことが必要になる」

 試合後、横浜FMを率いるケヴィン・マスカット監督は、そう振り返っている。戦力的な優位。それがあらためて出た一戦だったと言える。
 
 前半、横浜FCは健闘していた。集中した攻守で、パスミスを誘発。結果的に、相手センターバックが果敢にボールをつけるのを躊躇させていた。

 しかし、横浜FMは一瞬の隙を逃さない。後半開始直後、敵陣でボールを奪い合うなか、一度は敵に奪われる形になった。それをマルコス・ジュニオールが再び奪い返すと、アンデルソン・ロペスとのパス交換で抜け出し、ゴールネットを揺らした。一瞬の出来事だった。

「前半、互角以上にやれていたんですが。後半の立ち上がりに失点し、経験が少ない選手が多いこともあって、メンタルのところでガクってきてしまって、マリノスの勢いになってしまったと思います」(横浜FC/三田啓貴)

 横浜FMは地力の強さを見せた。外国人選手の水準が突出して高い。その点で戦力的に破格なのだ。

 しかし一方で、今シーズンは戦力ダウンも懸念されていた。MVPの岩田智輝、ベストイレブンの高丘陽平、チーム得点王のレオ・セアラ、アシスト2位の仲川輝人を失った痛手は大きい。この日は、日本代表FW西村拓真も体調不良で欠いていた。右サイドバックに至っては、小池龍太、松原健のふたりともケガで不在だった。

 その逆風を跳ね返すほどの強さだ。

横浜FC戦は右サイドバックでプレー、勝利に貢献した山根陸(横浜F・マリノス)横浜FC戦は右サイドバックでプレー、勝利に貢献した山根陸(横浜F・マリノス)この記事に関連する写真を見る 横浜ダービーで横浜F?の強さを最も象徴していたのは、プロ2年目のルーキー、山根陸だろう。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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