横浜F・マリノスの底力を象徴した2年目のルーキー山根陸 慣れない新ポジションで一発回答 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

【ボランチながらSBもこなす】

 山根は本来、ボランチを本職としている。シーズン開幕前、左サイドバックではテストされていたが、右サイドでは小池、松原がいたこともあって、未経験だった。それがふたりのケガや不調で、さらに他に試した選手たちも及第点には届かなかったこともあり、お鉢が回ってきたわけだ。

 アカデミー出身の山根は、一発回答している。序盤、右サイドを抜け出した水沼宏太がボールを受け、戻したところを走り込んでゴールネットを揺らした。オフサイド判定で取り消されたが、連係は阿吽の呼吸だった。

「あれがゴールだったら、もっとラクにできたんですけど、僕が出ちゃったんで」

 水沼はそう言って笑ったが、今シーズン開幕前から山根に対し、「ゴールできるポジションに入ってこい」と言い続けてきた。

「(山根)陸にとっては慣れていないポジションでの起用だったので、『お前のリズムでやってくれたら合わせるから』って伝えていました。距離感を作りながらでしたが、陸はいいところに入ってくれるし、いいタイミングでボールも出せるからやりやすい。(2点目は)あいつが『フリック、わかっていましたか?』って言うから、『体の向きでわかってた』って。あれは気持ちよかったですね」

 後半17分、山根が才気の片鱗を見せた。右サイドで何度もボールを出し入れし、相手を動かしてプレーの渦を作る。畠中槙之輔からの縦パスを引き出すと、それをフリックで水沼に送り、リターンを受けた後、完全に守備陣を破り、マルコス、エウベルと渡って、最後はA・ロペスが決めた。

 山根はプレーインテリジェンスの高さに特徴がある。どこにいても、やるべきことがわかっているのだ。それだけに、サイドバックも違和感はなかった。

 そもそも、横浜FMは"偽サイドバック"のような色合いが強く、インサイドでプレーメイクする能力が求められる。ボールありきの戦術を信奉するチームでは、ボランチとサイドバックは符合性が高い。ブラジル代表やFCバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンのようなチームでは、ボランチとサイドバックを兼ねる選手も少なくないのだ。

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