サガン鳥栖の反撃は始まるか 「開幕5連敗も覚悟していた」という現状と2季目の挑戦者精神

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

 3月16日、駅前不動産スタジアム。春の陽光がうららかに差し込んでいた。不思議な光景があった。

 選手たちの水飲み場になっているピッチ中央で、MF河原創がボールを手に持って、側に立つコーチと話していた。360度、ピッチを見回す。それぞれの風景があった。左サイドでは岩崎悠人がコーチと1対1の間合いを測り、敵ゴール前ではポストから西川潤、富樫敬真がシュートを放ち、右側では小さな区画で激しい2対2が行なわれ、うしろではGK朴一圭がふたりのセンターバックに口角泡を飛ばしていた。

 全体練習が終わったあとのクールダウンを切り取った風景だが、なんとなく試合の構図になっていたのだ。

 リフティングをしていた河原は、岩崎へおもむろに近寄る。左サイドへパスを出し、コーチを相手に1対1に挑む。動きがつながった。

 それぞれのピースが、パズルのようにひとつになる。川井健太監督が行なっている練習は、そこに眼目があるのだろう。攻守、各ゾーンに分け、それぞれのピースが鍛えられている。それが全体練習以外でも、何となく形成されていたのが興味深かった。

 今シーズン、鳥栖は開幕から湘南ベルマーレに1-5と派手なスコアで敗れている。開幕からの5試合は、1勝1分け3敗と下位に低迷。現状の出遅れは予想外だったか。

「正直、開幕5連敗も覚悟していたので」

 首脳陣の言葉は、チームの現状を表していた。今はあくまで、パズルのピースを組み直している段階だ。

 第6節、鳥栖は本拠地でFC東京に1-0と勝利した。終了間際、新たに獲得したFW河田篤秀のゴールだった。反撃の狼煙となるのか?

FC東京戦で決勝ゴールを決め、チームメイトに祝福される河田篤秀(サガン鳥栖)FC東京戦で決勝ゴールを決め、チームメイトに祝福される河田篤秀(サガン鳥栖)この記事に関連する写真を見る 昨シーズン、鳥栖は小さな旋風を巻き起こしている。川井監督に率いられ、降格有力候補だった下馬表を覆し、王者、横浜F・マリノスとも打ち合いを挑み、互角の戦いを演じた。ボールを握って、敵陣でのプレーに挑む様子は挑戦者の潔さがあった。

「(川井)健太さんには、『勝手にそうなるように仕組みは作っているから、その予想を超えてくれ』って言われます」

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