サガン鳥栖の反撃は始まるか 「開幕5連敗も覚悟していた」という現状と2季目の挑戦者精神 (3ページ目)
ケガ人を含めて今はアゲインストの風が吹くが、反撃するための仮説はできている。
「健太さんは、やるべきことを与えたうえで"お前が決断しろ"って言ってくれていると思うんですよ。だから、つなぐのが原則でも、本当に必要なプレーなら、選手が覚悟を持って判断すべきで」
鳥栖の戦術を司るGK朴も、「余白」について語っている。
「選手がそれぞれの判断に覚悟を持ってプレーできれば、状況は変わるはず。『鳥栖はパギ(朴の愛称)ありき』と言ってもらえるのはうれしいですけど、ポジションは絶対ではないし、自分自身がまず人生を懸けてプレーし続けないと。自分は健太さんがやろうとしているサッカーで日本サッカーを席巻し、"日本サッカーのスタンダードにしたい"と思っているので」
負けが先行すれば、周囲は途端にざわつき始める。手のひら返しだが、プロクラブとしては自然の摂理でもあるだろう。出遅れは取り返さないといけない。
しかし、少なくともチーム内では進むべき道標がはっきりしていた。結果が出なかった試合も、選手が仕組みを動かし、相手を圧倒する時間があった。第2節、ガンバ大阪戦で樺山諒乃介が決めたスーパーゴールも、そのひとつだろう。それは"仕組み"がもたらした産物で、偶然ではなく、再現性があるものだ。
「このチームにいる喜び」
選手だけでなくスタッフも、それを感じている。FC東京戦の劇的な勝利はチームに確信を与えるだろう。風が吹き始めた。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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