Jリーグ歴代FWトップ10を鄭大世が選出 「化け物に近い身体能力」「初めて吹っ飛ばされた」というストライカーたち (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

【初めて吹っ飛ばされた】

4位 フッキ(元川崎フロンターレ、東京ヴェルディほか)

 僕は日本でプレーしていて、練習も含めて体をぶつけられて吹っ飛ばされたことがなかったんですよ。そのフィジカルの強さには強いこだわりを持っていて、当たり負けだけは絶対にしないという誇りを持っていたんです。

 でも川崎時代の練習でフッキに当たった瞬間に、僕は空を眺めていたんですよ。それからドンと地面に落ちて、自分が吹っ飛ばされたことに気がつきました。あんな経験は初めてでしたね。

 体の強さは、お尻のデカさだと思うんですよ。僕も母親譲りでお尻はめちゃくちゃゴツいので、Jリーグでは負けないんです。でもフッキは、それをさらに凌ぐお尻のデカさをしていましたね。キックの強さは異次元で、ボールが爆発するんじゃないかと思うくらいで、まるで『キャプテン翼』の世界ですよ。GKが可哀想になるくらいです。

 それでも川崎にいた2008年頃は彼もまだ若くて、僕が先発だったのでJリーグでの優位性は僕のほうがありました。でも時が経ってからはえげつない。UEFAチャンピオンズリーグに出て、あのセレソン(ブラジル代表)でエース格でしたからね。それだけの器だったと思うと、僕がフィジカルで吹っ飛ばされるのも納得ですね。

3位 エメルソン(元浦和レッズほか)

 エメルソンが浦和レッズでプレーした2005年頃に、彼を止められる選手はいなかったと思いますね。「こんなすごいFWがJリーグにいるのか」と思いました。

 その頃、僕はまだプロではなかったのでテレビでしか見たことがないんですが、まるでチーターがピッチの中を走り回っているんじゃないかというくらい野生的で、人間離れしたスピードがありました。「こんなの誰が止められるんだよ」とテレビで見ながら思っていましたね。

 それから「そんなところから打つの!?」という位置からでも、ゴールを決めていましたよね。どこからでも打つというのは超わがままだと思うんですけど、今思えばあの超強引なスタイルにはすごく影響を受けて、マネしていました。

2位 ジュニーニョ(元川崎フロンターレ、鹿島アントラーズほか)

 ジュニーニョは「川崎の太陽」と呼ばれていましたけど、シンプルにすごいストライカーでした。なによりも圧倒的なスピードがすごかった。オフ・ザ・ボールの時はもちろん、ボールを持っていてもずば抜けて速かった。

 それだけのスピードと突破力がありながら、周りを使うことにも長けていました。自分自身で点を決められるし、サイドを突破してGKとDFの間にクロスを入れられるし、低い位置でボールを受けて、仕掛けて、相手のラインを下げることもできる。

 それからシュート技術がとにかく高くて、ミドルレンジのインフロントで巻いて打つシュートは感動的なくらいうまかった。大舞台で勝負強いタイプではなかったけれど、リーグ戦のなかでチームが苦しい時、「あと1点欲しい」という場面で決めてくれるのが彼でした。

 ゴールも取って、アシストもして、起点にもなっていた。彼1人で2人、3人分くらいの働きをしていたので、当時の川崎は強かったんですよね。

 彼がいた頃の川崎の攻撃は縦に速い攻撃が特徴的でしたけど、それはジュニーニョが「縦に早く出せ」と要求していて、それで(中村)憲剛さんに縦に早く出すパス能力が身について、こんどは憲剛さんが僕に「縦に早く動け」と要求するという流れがあって、あの縦に速い攻撃が生まれていましたね。

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