Jリーグでスゴイと思ったDFトップ10を鄭大世が振り返る「ノーガードで殴り合ってくれた」「完璧な体勢で競り負けた」猛者たち (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

【「プロレスをしにいくんだ」と準備していた】

7位 ファン・ソッコ(サガン鳥栖)

 ファン・ソッコは先発から外れていたのに、気づいたら試合に出ているタイプで、いろんな能力が高いですね。足元の技術はあまり高くはないけれど、それ以外の能力が高いので今の時代にも適応できる選手なんです。

 とくに対人に強くて、前に出て潰せるし、ヘディングも勝てる。でも僕が一番彼に感銘を受けたのは、淡々とやれることです。たとえ自分の望んでいない状況に置かれても、やるべきことをちゃんとコツコツやれるんです。それで気づいたら試合に出ているんですね。

 その姿を見て「精神的、人間的にも本当にできている選手だな」と思いました。僕はうまくいかないと周りに当たり散らすタイプなんですよ。それはいくつになってもそうでした。監督のせいにするし、イライラして味方に当たるし。そういうやつが味方にいると絶対に嫌なんですよ。僕みたいなタイプは監督に「お前じゃない」と言われたら終わりです。

 でもファン・ソッコは、どんな監督であっても、そういう状況になってもちゃんと自分に矢印を向けて、必要なこと、求められていることを積み重ねられる。本当に彼からは学ぶことが多かったですね。プレーに波がないし、いいDFでした。

6位 岩政大樹(元鹿島アントラーズ、ファジアーノ岡山ほか)

 僕は岩政さんとの対戦が本当に好きでした。彼と対戦する前の心の準備は、サッカーではなくて「プロレスをしにいくんだ」と思って準備していましたね(笑)。

 岩政さんは僕の預けた体、パワーに対して、すべて体全体のパワーで返してきてくれるので、まるで相撲をとっているみたいでやりがいがあるんですよ。普通は相手が殴ってくるのがわかっていれば、そこをかわしてカウンターを打つのが賢いやり方ですよね。

 でもそこで高山善廣とドン・フライのように拳と拳で、ノーガードで殴り合ってくれたのは岩政さんしかいなかったです。後々話を聞いたら岩政さんも同じような心境だったみたいで、心は通じ合っていました。もちろん、いいDFなので嫌なDFでもありました。

5位 宮本恒靖(元ガンバ大阪、ヴィッセル神戸ほか)

 僕の弱点は、調子がいい時は誰にも止められないんですけど、調子が悪い時は猿にも止められちゃうくらいなんですよ。その僕の弱さを嘲笑うかのように突いてきたのが宮本さんでした。

 FWはポストプレーでボールを受ける時に、チェックの動きで後ろで受けると見せかけて足元にもらうからフリーで受けられるんですね。でも調子が悪いとそのチェックの動きをせずに「足元!」という感じで受けがちなんですよ。

 ただ、そうだったとしても裏を取られるリスクがあるので、DFはそこで先読みして動いてはだめなんです。でも宮本さんはそれをやってくるんです。「どうせお前足元でもらうんだろう」と、しかもさらに先を越してインターセプトをしてくるんですよ。

 だからそういう時に宮本さんと目が合うと、まるでメデューサに睨まれたかのように動けなくなっていました。僕の心をすべて見透かしたようなあの守備は本当に嫌でした。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る