震災から12年──ベガルタ仙台vsいわきFCではいろいろな思いを背負った選手たちが「いつも以上の魂を込めて戦った」 (3ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • photo by Kyodo News

 いわきはGK高木和徹、DF遠藤凌を除くスタメン9人と7人の控え選手が、J2初挑戦である。大学卒業とともにいわきに加入し、鍛えられてきた選手たちばかりだ。18人の平均年齢は23.33歳で、仙台より2歳以上若い。J2屈指の"無印集団"は、J1昇格候補の仙台を敵地で撃破し、J2での初勝利をつかみ取ったのだった。

 試合後の村主博正監督は、興奮を抑えるように話した。

「自分たちのなかでは手応えのある試合をしてきましたが、なかなか勝点が取れなかった。そのなかで、アウェーで仙台と戦う状況を迎えて、何のためにチームが立ち上げられたのかを再確認して、諦めない姿勢をサポーターに見せようと選手たちと話しました。それを最後まで、やり続けてくれました」

 チームを代表してマイクを向けられた山下も、「被災地のチーム」としての立場に触れた。2019年から所属する26歳は、GK高木和に次ぐ年長者だ。

「僕たちが必死に戦うことで、勇気や希望を持ってもらえるようにしようと、選手全員で話していました。それが勝利という形になってよかったです」

 いわきの選手たちの"必死さ"は、ピッチ上のいたるところで読み取ることができた。彼らと対峙した仙台の遠藤は「僕たちがやりたいことがあまりできなかった」と切り出し、いわきの戦いぶりに触れた。

「それぞれにいろいろな思いを背負ってこの試合に臨みましたが、正直なところ、気持ちの面でいわきのほうが上だったのかなと思います」

 仙台のジュニアユース出身のMF郷家友太は、今シーズンの新加入選手だ。プロ6年目の23歳は、J1のヴィッセル神戸から地元のクラブに戻ってきた。前半のシュートチャンスを逃した自分を責めつつ、力強く前を向いた。

「昨日(3月11日)も今日もすごく特別な思いがあって、絶対に勝ちたい思いがすごく強かった。このクラブに帰ってきた時から、J1のステージへ上げたい気持ちでいます。今日の『復興応援試合』だけでなく、"チームのために"という気持ちを一日も忘れずにやっていけば、最後にサポーターのみなさんと喜べると思います」

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