震災から12年──ベガルタ仙台vsいわきFCではいろいろな思いを背負った選手たちが「いつも以上の魂を込めて戦った」 (4ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • photo by Kyodo News

 2011年の東日本大震災から、今年で12年目になる。発災によって外壁の剥がれ落ちたスタジアムの最寄り駅は、もうずいぶん前に元どおりの姿を取り戻している。路面の安全確保のために置かれていたカラーコーンを、持ち出す必要もなくなっている。

 街の景色からは、震災の傷跡がほぼなくなっている。ただ、震災の影響には濃淡がある。日常を取り戻した人がいれば、苦しみを抱える人もいる。『3.11』を思い起こすきっかけとなる仙台のホームゲームは、だからこそ、意味があるのだろう。

「震災からの復興が目的でできたクラブとして、ベガルタ仙台さんとJ2の舞台でできるのはホントにうれしかった。ただ、そのことを変に意識するのではなく、自分たちが積み上げてきたものを全力で出しきることは、どの試合でも変わらない。そこは変に気負いすぎることなく、でも、いつも以上の魂を込めて戦いました」

 決勝点を決めた江川が語った思いは、両チームの選手とスタッフに共通する思いだったのではないだろうか。

 3月11日だけでなく、12日も、13日も、1週間後も、1カ月後も、半年後も、被災地と被災者に寄り添っていく。復興へ向けてともに歩んでいく具体的なアクションとして、被災地のチームは、選手は、どの試合でも、どの瞬間にも、全力を注ぐ。

 真っ直ぐな思いが連なるその姿勢が、スポーツの価値を高め、サッカーが被災地に欠かせないものとなっていくのだろう。

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