首位ヴィッセル神戸の連勝ストップが物語る現状。イニエスタ合流で起こる「変化」が岐路となる

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

 失点シーンにヴィッセル神戸の現状が透けて見えた。

 前半21分、相手の浦和レッズが「やり直し」でバックラインまでボールを戻した時、センターバックに左足で対角線のロングボールを入れられている。質の高いフィードに相手選手が先に反応し、神戸の選手は背後へ走らされる形で後手に回ると、ヘディングで落とされる。そしてスペースに入り込んだ伊藤敦樹に、フリーで叩き込まれてしまった。あまりに呆気ない失点だ。

「ズレがあったというか......。みんなで"締め合うべき"ところはもっとするべきで、ロングボール一本のヘディングでやられているわけで、それぞれの反応はどうだったのか。相手が長いボールを使うのは想定内だっただけに......」(神戸/吉田孝行監督)

 プレスやマーキングの反省も大事だが、「個人」よりも「チーム」の戦術熟成に問題はあった。プレスで蓋をするには浦和のキッカーは遠かったが、全体が浮ついたように前に出ていた。感覚的に動いているだけで、統率感がない。単純な話、長いボールを蹴り込まれた時の対処として、アンカー、もしくは他のMFがバックラインの前のスペースを占拠するのは大原則で、初歩的な危険回避のオートマティズムも欠けていた。

 3月11日、ノエビアスタジアム。首位の神戸は本拠地に浦和を迎え、0-1で敗れている。開幕からの連勝は3で止まった形だ。

存在感を見せる大迫勇也(ヴィッセル神戸)だが、浦和レッズ戦は不発に終わった存在感を見せる大迫勇也(ヴィッセル神戸)だが、浦和レッズ戦は不発に終わったこの記事に関連する写真を見る 今季の神戸は強いのか、弱いのか?

 一昨シーズン途中あたりから、神戸はひとつの矛盾を孕むようになった。端的に言えば、アンドレス・イニエスタの存在である。大迫勇也、武藤嘉紀など日本人ストライカーが新たに加入し、その"断層"は明瞭になった。

「アンドレスがいたら、チャンスを作り出してくれる。ただ、アンドレスがいると(肉体的な消耗を求めることができず)、ハイプレスからカウンターという強い強度の試合展開はできない」

 ジレンマのなか、着地点を見つけようとしてきた。しかしイニエスタがいると、どうしてもラインを下げざるを得ず、防戦一方になってしまう。かと言って、ボールを握り続け、高い位置で攻め立てる展開も作り出せなかった。終盤にイニエスタを投入するのがひとつの落としどころだったが......。

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