首位ヴィッセル神戸の連勝ストップが物語る現状。イニエスタ合流で起こる「変化」が岐路となる (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Kyodo news

【「大迫」という個人戦術】

 今シーズン、イニエスタは開幕から第5子の出産に立ち会うために、スペインに帰国し、欠場が続いている。

 図らずも神戸は3連勝のスタートを切った。ハイプレスで相手を嫌がらせ、カウンターを発動、もしくはセカンドボールを回収する、という形を徹底。神戸と似たリアクション戦術のアビスパ福岡戦以外、勝利した試合はポゼッション率では下回っていた。相手にボールを持たせることで、「後の先」を取り、ガンバ大阪戦(4-0)は"入れ食い"だった。

 敗れた浦和戦で、神戸は皮肉にもポゼッション率で上回っている。ボールを持って何をするか。主体的プレーが求められた途端、持ち味を出せなくなった。スペースを占拠しながらボールを前に運び、サイドで優位に立って崩し、ゴールに迫るという機会は少ない。一転して、イニエスタの"不在の在"を感じさせている。

 もっともこの一戦も、結果そのものはどう転んでいたか、わからない。

「ここで仕留める、という時間帯はあったと思います。そこでつかみきることができなかった」(神戸/酒井高徳)

 後半に入って54分からの猛攻は、神戸の真骨頂だった。

 敵陣内で相手のスローインを奪い、奪われ、を繰り返したあと、それでも浦和がボールをつなげようとしたところ、大迫と齊藤未月がボールホルダーを挟み込み、力強く奪い返す。ショートカウンターから大迫が鋭いシュートを放って、GKを脅かした。プレスからのカウンターは、鮮やかだった。

 1分後にも、敵陣で相手MFが足を滑らせたところ、大迫が抜け目なく奪い取り、左を走った汰木康也へパス、シュートはディフェンスにブロックされている。さらに2分後、GKのパントキックを大迫が前線で収め、左の汰木へ。汰木はドリブルで持ち上がったが、シュートはわずかに逸れた。かさにかかった攻撃は、猛烈だった。

「大迫」という個人戦術は、浦和をあと一歩のところまで追い詰めていた。彼は神戸の強みと言える。

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