神戸は「バルセロナ化から遠い身の丈にあったプレー」鹿島は「シンプルに得意なこと」で好調 開幕3戦のJリーグ各クラブを福田正博が分析

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Sano Miki

福田正博 フットボール原論

■開幕3戦が終わったJ1リーグは、スタートダッシュに成功したチーム、課題を多く残しているチームと明暗が分かれた。福田正博氏が注目チームのプレーぶりと今後の展望を語った。

鹿島アントラーズは各選手の得意なプレーで勝負し、力強さがある鹿島アントラーズは各選手の得意なプレーで勝負し、力強さがあるこの記事に関連する写真を見る

【神戸は身の丈にあった無理がないサッカー】

 開幕したJリーグでヴィッセル神戸が3連勝。スタートダッシュを決めた。

 もともと力のあるメンバーが揃っていたものの、昨シーズンは初勝利が遠くなったことが最後まで尾を引き、苦しいシーズンになった。しかし今季は、昨季途中から就任した吉田孝行監督のもとで現実的なサッカーをしているのが、この結果に繋がっているのではと感じる。

 アンドレス・イニエスタがチームに加わった当初に標榜した『バルセロナ化』からは、ほど遠いサッカーになってしまったが、勝ち点を手にするためには何をしなければいけないかを理解したサッカーをしている。身の丈にあったサッカーだから無理がないのが今季の神戸の強みだろう。

 シーズンは始まったばかりで調子を落とすことはあると思う。しかし、能力の高い選手が揃っているだけに、シンプルなサッカーを徹底していれば、勝ち点を大きく取りこぼすことはないのではないかと見ている。

 スタートダッシュが重要なリーグ戦で、川崎フロンターレは3試合を終えて1勝1分1敗。敗れた開幕戦の横浜F・マリノス戦も、内容は相手よりも上回っていた。ただ、先行きを考えると雲行きは怪しい。とりわけセンターバック陣に故障者が続出しているのは気がかりだ。

 車屋紳太郎に加え、第3節の湘南ベルマーレ戦ではジェジエウが負傷交代。長く戦列を離れるようだと、昨季と同じ轍を踏む可能性がある。経験のある山村和也、柏レイソルから加入した大南拓磨らだけでは、さすがに鬼木達監督でも心もとなく感じているのではないか。

 守備の不安を補って余りある攻撃力を発揮できるか。攻撃陣の核であるレアンドロ・ダミアンの復帰も遠くないのは心強いことだが、攻撃のカギは大島僚太と宮代大聖が握っていると見ている。

 大島は故障から戦列に戻ってきたものの、まだ本来の輝きを放っているとは言い難い。調子がさらに上向けば、川崎らしいサッカーをする時間帯が増えると思っている。また昨季のサガン鳥栖からレンタルバックとなった宮代は、開幕から3戦スタメン出場して得点はゼロ。ただ、3試合ともシュートシーンをつくるなど、内容そのものは悪くはない。キッカケひとつでブレークスルーしていく可能性はあるだろう。

 いずれにしろ川崎は主力選手が戻ってくれば、誰もが知る実力を発揮するはずだ。しかし、もともと選手層に厚みがあるわけではないだけに、故障者の復帰が長引いた時にどうなるのか。そこは監督の手腕だけではなく、クラブのマネジメントも重要になってくる。"常勝・川崎"がそうしたピンチをどう乗りきるかを見たい。

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