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得点パターンわずか2種類でゴール量産の45歳Fリーガーが引退 フットサル界稀代のワンタッチゴーラーにその極意を聞いてきた (3ページ目)

  • 河合 拓●取材・文 text by Kawai Taku
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

【スライディングでパンツが溶ける】

 その甲斐もあり、最近では「見えていた?」と聞く前に、若い選手から「友紀さん、見えていました!」という声が出るようになったと、金山は目を細める。

「僕がファーポストのところに、サーって滑り込んで、その動きにGKがつられたのを見逃さずに、ニアサイドにシュートを決めた選手がいたんです。1カ月前の練習で、彼に『ファーを見ておけ』『見えていたか?』と聞いていたんですが、今日は逆にシュートを決めた彼から『見えていました!』って言ってきた。そうやって見ることで、選択肢も増えると思うし、得点にもつながると思います。逆に僕が引退してから、同じような状況になった時にファー詰めする選手がいなかったら、ボールを持った選手から『あそこまで入れ!』と要求する声が出ると思う。そうなっていけば、嬉しいですね」

 職人芸と言える金山の「ファー詰め」だが、独特な悩みがあった。ファーポスト際にスライディングをすることも多いが、その際に地面と擦れるためにパンツは溶けて、シューズも傷むのだ。

「シューズはまずアウトサイドが溶けるんですよ。あとはソックスのくるぶしのところ、短パンの左側がだいたい溶けますね。みんなには『GK以外でパンツが溶ける人いない』って言われるんですけどね」

 ゴール前にスライディングをすると、速いボールを足先の点で合わせることをイメージしがちだ。ところが、実際は面を作るイメージなのだという。

金山友紀が得意としていた「ファー詰め」のかたちのゴールシーン金山友紀が得意としていた「ファー詰め」のかたちのゴールシーンこの記事に関連する写真を見る「スライディングする時は、足を畳んでやりますね。野球のスライディングに似ています。右からのボールに対しても、左足を畳んで右足で行くことが多いですね。しかも、畳みながら体を伸ばして面を作る。それでファーポストに滑りこんで、ボールが来た時は、自分の体ごとボールをゴールに流し込むんです。面を作っておいて、右足を伸ばして体に当ててそのまま流し込む。そのタイミングで滑りますね。シューズは1カ月くらい持ちますが、短パンは一発で溶けます」

 選手たちに支給される短パンは、シーズンを通じて二着のみ。通常、選手たちは前半に一枚、後半に一枚履くのだという。金山はパンツに穴が開いた場合、「入場の時に穴が開いていると恥ずかしいから」とそのパンツを後半用にするのだという。

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