川崎フロンターレの逆転劇を生んだのはPK判定のせいだけではない。背景に左SB佐々木旭の投入 (2ページ目)
【鹿島は右サイドを制していた】
だが、橘田を内寄りの高い位置に置く作戦は奏功したようには見えなかった。左のサイドアタッカーは実質、ウイングのマルシーニョひとりとなり、その孤立を招くことになった。横浜FM戦で大活躍したマルシーニョが沈黙する姿に、川崎の苦戦は象徴されていた。
前半5分、左から鹿島の鈴木優磨が蹴り込んだクロスボールを頭で流し込んだ知念慶の先制弾も、起点となったのは右サイドだった。右インサイドハーフのディエゴ・ピトゥカから、今季サンフレッチェ広島から移籍してきた快足ウイング藤井智也にボールが収まった瞬間である。
鹿島はここに人数をかけた。右SB常本佳吾が攻撃参加。ピトゥカに加え、左インサイドハーフの樋口雄太も駆けつけ、まるで中盤を支配するような感覚で4人が右サイドの高い位置を使いパスワークを展開した。
典型的な左SBではない橘田は、藤井にボールが渡った時、若干、後手を踏んだ。圧をかけられずにいた。攻撃参加した常本のマークを、対面の関係にあるはずのマルシーニョが外していたことも鹿島のパスワークを円滑にした理由だ。
鹿島が開始5分に挙げた先制弾を語る時、川崎の左サイド対鹿島の右サイドの関係で、後者が勝っていたという事実を除外することはできない。
だが後半13分、鹿島の藤井が故障退場。右ウイングには松村優太が投入された。一方、先述のとおり川崎サイドではその2分前に、シミッチと佐々木の戦術的交代が行なわれていた。鹿島の右ウイング対川崎の左SBは松村対佐々木に変わった。
松村が悪かったと言うより、佐々木が上手だったという印象だ。この関係の優劣がピッチ全体に波及し、同点、さらには逆転劇につながる背景になったと筆者は考える。
昨季、流通経済大学から川崎に入団した23歳。川崎の左SBとして最も先発の機会を多く得ていた登里享平が負傷したことも手伝い、佐々木は開幕からスタメンの座を掴んだ。昨季は日本代表入りもあるのではないかと囁かれたが、秋に負傷。後半戦を棒に振った。今季は登里が再び開幕を前に負傷。開幕戦のスタメンは佐々木が飾った。そこで終盤1アシストを記録。存在感をアピールしていた。
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