知念慶はフロンターレにいたら「選手として終わっていくなって」アントラーズ移籍を伝えた家長昭博からは「心に響くメッセージ」が届いた (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

【変わることができるのでは...】

「アントラーズって、もともと自分のなかでは特別なイメージがありました。試合で対戦する時は、いつもすごく燃えるんですよね。Jリーグの日程が発表された時も、ここでアントラーズと対戦するのかと確認していたように、特に熱くなる1試合でした。

 アントラーズと対戦する週は気合いが入りましたし、試合前も緊張感がものすごくあった。そう自分が思っているようなチームに行ったら、自分のなかに燃え上がるものが自然と沸き上がってくるのではないかと、オファーがあった時には真っ先に思いました」

 対戦相手としていつも以上に燃えるチームの一員になれば、自分自身の闘志にさらに火がつくのではないか──。

「誰かに相談することはなかった」という知念だが、5年間を過ごした川崎のチームメイトに移籍することを報告すると、みんながみんな「さみしくなる」と返信をくれた。そのなかで、少し異なる反応で、また心に響くメッセージを送ってくれたのが、家長昭博だった。

「相当な覚悟があることはわかるよ」

 知念は言う。

「うれしかったですね。アキさん(家長)自身もここまで幾度も移籍をしていて、その時々でいろいろな出来事や経験をしてきた人だと思いますし、そのすべてを成長の糧にしてきた人だとも思います。

 その人に、自分の覚悟を感じ取ってもらえた。そう思ったら、アキさん自身もそういう決断をして、今に至っているのかなと思うことができました。自分自身もアントラーズという厳しい環境に身を置くことで、変わることができるのではないかと思ったんです」

 鹿島で選手としてのたくましさを身につけ、自分のなかにある甘さを払拭する──。完全移籍により加入したのは、自身の退路を断ち、自分自身を追い込むためだった。

◆後編につづく>>シャイな知念慶が「叫び、吠えるアントラーズの男」になる


【profile】
知念慶(ちねん・けい)
1995年3月17日生まれ、沖縄県島尻郡出身。兄の影響で小学1年生からサッカーを始める。地元の知念高校を卒業後、沖縄を離れて愛知学院大学に進学。東海学生リーグで得点王になる活躍もあり、2017年に川崎フロンターレに加入する。川崎在籍5シーズンで(2020年は大分トリニータに期限付き移籍)3度のJ1優勝に貢献。2023年、鹿島アントラーズに完全移籍。ポジション=FW。身長177cm、体重73kg。

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【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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