日本代表に32歳でデビューした水沼宏太の限界突破論。「一昨年はスタメン1試合ですから(苦笑)」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

愛しているJ! Jリーグ2023開幕特集

水沼宏太(横浜F・マリノス)
インタビュー後編

 昨シーズン、水沼宏太(横浜F・マリノス、32歳)は数字を叩き出し、殻を打ち破っている。31試合出場7得点7アシスト。もともと、サイドでテンポを作る動きは秀逸だったが、確実に得点につながるプレーが多くなった。ピンポイントクロスは、Jリーグ歴代でも至高の作品だ。

「一昨シーズンはスタメンが1試合しかなかったわけで、サッカーは、本当に想像できないことが起こります。だからこそ楽しいし、限界なんてないなと思う」

 水沼は言う。腹を括った生き方が、彼を強くしてきた。32歳での初代表も、ひとつの結実に過ぎない。

昨シーズン、日本代表デビューを果たした水沼宏太(横浜F・マリノス)昨シーズン、日本代表デビューを果たした水沼宏太(横浜F・マリノス)この記事に関連する写真を見る――32歳で勝ち取った日本代表デビュー(E-1選手権の香港戦)、感慨もひとしおだったのでは?

「鳥肌が立ちました。代表のユニフォームを着て、国歌を聞いて、試合に臨む。年代別代表は経験していましたが、フル代表は初。心の底からここにい続けたいと思いました。行ってみないと気づけなかったと思います」

――どんな刺激を受けましたか。

「試合にかける思いの強さというか、(所属クラブに戻ってからも)代表に戻りたいという思いから、さらに少しもプレーの質を落とせないという気持ちになるんです。どの試合でも全力で表現して、"もう一回代表へ"と。ひとつの試合にかける思いが何倍も大きくなりました、今まで手を抜いていたわけではないですが、思いのベースが強くなりましたね」

――代表でも右アタッカーとして、すぐチームにフィットしました。

「新しい選手と組んでも、自分のプレーができたのは自信になりました。F・マリノスの選手が多かったのはありますけど、自分は何度か移籍するたび、新しい選手とどうやってフィットするか、という作業をずっとやってきました。だから代表でも、そこは落とし込めたかなって思います。初めての監督との関係もそうで、考えて、プレーに移せているのは財産です。それに合わせるだけではなく、自分のプレーに周りの選手が合わせてくれるにはどうしたらいいか、と。それが成功すると、成長した気持ちになるんですよ。"俺、これもできるんだ!"って」

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