W杯でも議論となった「PKは運ではない」を実証。鎌田大地も成し得なかった日本一へ、京都・東山が「平常心」で決勝に挑む
「ずいぶんと堂々としているな」と感じた。
初の国立競技場で、初の決勝進出をかけたPK戦──。大きな重圧がかかるなか、東山(京都府)の選手たちはこともなげに、際どいコースに鋭いシュートを次々に突き刺していった。
そして守護神の佐藤瑞起(3年)が2本のシュートをストップし、4人目のキッカーMF松橋啓太(3年)が自信満々の力強いキックでネットを揺らす。この瞬間、東山が同校史上初となる決勝進出を成し遂げた。
PKを止めて感情を爆発させる東山GK佐藤瑞起この記事に関連する写真を見る ともにカタールワールドカップメンバーを輩出する(東山=鎌田大地/2015年卒、大津=谷口彰悟/2010年卒)"名門対決"となった東山と大津(熊本県)の準決勝は、昨年大会で青森山田(青森県)に敗れたチーム同士の対戦となった。
この試合まで、ともに1失点。互いに能力の高いGKを擁しており、堅守のチームとしてクローズアップされていたが、東山にはセレッソ大阪内定のMF阪田澪哉(3年)、大津にはU-19代表候補のFW小林俊瑛(3年)と質の高い攻撃陣を揃えており、アグレッシブな戦いが期待された。
実際に前半から、ゴール前での激しい攻防が繰り広げられた。東山は松橋の配球から素早く相手ゴールに迫り、大津は高い位置を取る東山のサイドバックの裏を突く攻撃が冴えた。
両チームともに際立ったのは、個々の技術の高さだ。むやみに蹴らず、しっかりとボールをつなぎながら、意図した攻撃を展開。簡単に失うシーンはほとんどなく、激しいプレッシャーを受けながらも確実にボールを前に進めていく。
それでいて自陣ゴール前での集中力も高く、危険なシーンではしっかりと身体を張って得点を許さない。いずれも質の高い攻撃と守備を備えているのだから、好ゲームとなったのは必至だった。
もっとも、前半なかば過ぎから徐々に大津のペースになっていく。そして39分には狙いどおりの展開から完璧に左サイドを崩し、MF井伊虎太郎(3年)が先制ゴールを奪取。得点を奪ったこともさることながら、ボール支配率や連動性も加味すれば、この時点では大津のほうが決勝進出に近いチームかと思われた。
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