湘南、京都、札幌にあって神戸、G大阪にないもの。J1残留争い、もうひとつの視点 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

戦力で劣ってもビジョンが明確なチーム

 その後は個の力量差で優勢に試合を進めたが、後半に入ってDF小林友希が自陣で味方のインサイドへのラフなパスにもたつき、相手を引き倒してレッドカード。これで試合は決まった。今季4人目の監督のもと、お互いがやるべきことが徹底されておらず、練度の低さを突かれた格好だ。

 G大阪も「不安定さ」は共通している。

 直近の0-3で完敗した鳥栖戦。監督交代したG大阪は残留戦と割り切り、リスクの少ないロングボールを入れ、セカンドでの勝負に切り替えていた。しかし、それだけでは手詰まりになるし、能力値の高い選手は多いだけに工夫を加えようとする。そこで連係の未熟さが出た。

 相手にはめられるなか、DFクォン・ギョンウォンは自陣でパスミスを誘発され、ショートカウンターで先制点を失った。2点目もクロスに対して人はいても寄せが甘く、3点目もカウンターで裏返しにされ、相手を自由にしすぎていた。攻撃では食野亮太郎の仕掛けは迫力があったが、単発に終わった。

 神戸にもG大阪にも敵を凌駕できる人材はいる。十分に勝ち点を見込めるし、十分に巻き返せる。ただ、攻撃に再現性が乏しく、守備はぜい弱さを抱え、結果的に厳しい順位にいるのだ。

 残留争いにある各チームだが、それぞれ事情は違う。

「何もないゲームになってしまいました」

 首位、横浜FMの本拠地に乗り込み、3-0と敗れた湘南ベルマーレ(14位、勝ち点29)の山口智監督は開口一番にそう語ったが、戦力的に見れば十分に健闘を示したと言える。

 チームとしての戦いのビジョンが見え、後半序盤までよく耐えていた。むしろ彼らのリズムとなって攻める形が生まれてきたなかで、色気が出たか。後半11分、DF舘幸希がボールを中へコントロールするリスクを冒し、手元が狂った。これをかっさらわれて、あっさりカウンターで失点した。

「守りきっている感覚はあったので、みんなの気迫に水を差すようなプレーをしてしまった。スキを見せて、申し訳ない」

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