乾貴士が披露したスーパープレーに見る、ロシアW杯最大の功労者としてのプライド (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

京都戦のスーパーゴールにセネガル戦を想起

 8月14日、ガンバ大阪とのアウェー戦でも、乾は白崎凌兵が逆サイドから蹴った長い対角線パスを、絵になるアクションで鮮やかに止めている。いざシュートという段でミートせず、淡泊な印象を与える結果になったが、右から来たボールに対応する巧さを、この試合でも見せつけることになった。

 懐かしい気がした。ともすると忘れがちになっていた4年半前の記憶が蘇ることになった。2018年ロシアW杯。乾はそこで2ゴール1アシストの大活躍を演じた。日本をベスト8の目前まで押し上げた最大の功労者であるという事実を思い出すことになった。

 8月27日に行なわれた京都サンガ戦で、筆者と思いを共有する人の数は一気に膨らんだのではないだろうか。サッカーファンの多くが4年半前のセネガル戦、ベルギー戦を想起したに違いない。

 対京都戦。0-0で迎えた後半23分のプレーである。

 清水は過去3戦に2勝1分けの成績を収め、一時期、最下位にまで後退した順位を11位(勝ち点28)まで上げていた。とはいえ自動降格ラインまでは6ポイント差。依然として降格候補であることは事実だった。対する京都は14位(勝ち点26)。この一戦はつまり、降格候補からの脱出をかけた戦いだった。そこで清水は試合を優勢に進めながらもてこずっていた。

 立田悠悟が左足で蹴ったロングキックが、前線にポジションを取っていた片山瑛一に収まった、その時だった。その下で構えるカルリーニョス・ジュニオを経由し、左サイドに張る乾に浮き球で送られてきた。

 そのツーバウンド目だった。その上がり際をインフロントとインステップの中間で、かぶせるようにハーフボレーで叩くと、次の瞬間、シュートはゴール右上隅に吸い込まれていた。美しい軌道を描いたスーパーゴールだった。

 頭をよぎったのはエカテリンブルクで行なわれた2018年ロシアW杯のセネガル戦だ。日本はセネガルに先制されたが、前半34分、乾が同点弾を決め、その時、試合は1-1で推移していた。乾の先制弾、さらに言えば、続くベルギー戦で挙げた試合を2-0とするゴールも、インフロントで巻くように蹴ったシュートだった。だが、京都戦のゴールと瓜ふたつだったのは、セネガル戦で後半19分に放ったバーとポストの角を直撃したシュートになる。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る