乾貴士が披露したスーパープレーに見る、ロシアW杯最大の功労者としてのプライド (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

代わる日本代表選手は確かにいるが...

 決まっていれば、セネガルに勝てていたかもしれない。当時のノートに筆者はそう記していた。日本はこの後、セネガルにゴールを許し1-2とされるが、後半33分、乾のマイナスの折り返しを本田圭佑が押し込み、2-2で引き分けた。

 この大会で演じた大迫勇也の活躍は、いまだによく論じられる。カタールW杯のメンバーに選ばれる可能性がある大迫に対し、乾はその可能性がほぼゼロ。乾が演じた4年前の活躍はともすると忘れられがちだ。

 大迫が1ゴールだったのに対し、乾は2ゴール。アシストも決めている。バーとポストの角を直撃した惜しい一撃も放っているというのに、である。カタールW杯が近づいたタイミングで清水に移籍した乾の、4年半前を彷彿とさせるシュートやトラップを目の当たりにすると、思わず判官贔屓をしたくなるのである。

 大迫に代わる選手は相変わらずいないが、乾に代わる選手は確かに存在する。日本はいまやウイング天国。4年前の日本より、ウイングの層は何倍も厚くなっている。34歳の乾はお呼びでない状態にある。森保一監督に至っては、就任しておよそ半年後、早々と彼に見切りをつけていた。

 だが、長めの対角線パスが左ウイングの乾の足元に収まった時、何かが起きそうな予感はいまだにする。そしてそこは早くも清水の生命線になりかけている。

 カタールW杯の足音とともに終盤を迎えるJリーグで、前回W杯の功労者としてのプライドを、キレキレのプレーに乗せて、いかんなく発揮してほしいものである。

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