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西川周作が理解不能「?」になったミレッGKコーチの教え。「ゴールは存在しない」が意味すること (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

GKコーチの講義が始まった

「ポジショニングと足の運び方も変わりました。特に足の運びについては、以前は細かいステップを踏んでいたんです」

 西川は「トゥトゥトゥトゥトゥトゥ」と擬音語で、そのステップを言い表した。それまでのステップを踏むと、やはりミレッGKコーチから指摘された。

「細かいステップだと逆に対応が遅れてしまう、と言われました。そのうえで、ゴール前のここからここまでは何メートルあると思うか、という話になり、そこから問題を出されたことがあったんです」

 講義の始まりである。ミレッGKコーチに出されたのは次の質問だった。

「ペナルティーエリアの大きさはどれくらいだ? ゴールの大きさはどれくらいだ?」

 さすがの西川も当たり前のようにプレーしてきたため、考えたこともなく、答えられなかったという。ちなみにペナルティーエリアのサイズはそれぞれのゴールポストから16.5メートル、ゴールのサイズは7.32メートル。ミレッGKコーチは、GKたるものそれを把握していなければならないと指摘した。

「そのうえで、ジョアンは『私の教え方としてゴールは存在しない』って言われたんですよ」

 画面越しにではあるが、思わず前のめりになり、言葉を反芻した。

「ゴールは存在しない?」

 頭にハテナが浮かんだが、そう言われた西川もまったく同じ反応だったという。

「自分もやってきたことなのですが、クロスが上がった時に、ライン上に下がるGKっているじゃないですか。ジョアンはその下がる時間があるならば、逆に前に出る時間も一緒ではないか、という考えを持っているんです。それを聞いた時に『なるほどな』『たしかにな』って思ったんですよね」

 ミレッGKコーチとの問答はさらに続いた。

「では、なぜGKはクロスが上がった時に下がろうとするのか?」

 答えは「ゴールを意識するから」だった。

「ならばジョアンは、ゴールがまずは存在しないと考えてみろと言うんです」

 こちらがまだ、ぽかんとしているのを見て、西川がミレッGKコーチに成り代わり、講義をしてくれた。

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