西川周作が理解不能「?」になったミレッGKコーチの教え。「ゴールは存在しない」が意味すること (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by AFLO

下がらずにキャッチする理論

「たとえばですけど、左からクロスが上がったとしますよね。GKは飛び出した時に、自分の背中にゴールがあると思ってしまう。でも、左からのクロスに対して飛び出した時に、正規のゴールの位置を忘れて、いわゆる右側にゴールがあると考えてみる。そうすると、GKは必然的に前に出て守ろうと考えますよね」

 説明を聞けば、要するに左サイドからクロスボールが上がった時は右サイドにゴールがあり、右サイドからクロスボールが上がった時には左サイドにゴールがあるという論理になる。当然、GKは(架空だが)そのゴールを守るためには下がるのではなく、飛び出さなければならなくなる。

 西川の守備範囲が広がった理由のひとつだった。

「その理論に沿って、下がらずに前に出てキャッチしたほうがいい、という考え方に変わったんです。体にその考えを染み込ませる練習もかなりやりました。

 クロスボールに対して、下がれば、守る準備をする時間はできるのですが、その分、コースが空くのでゴールを決められてしまう確率は高くなってしまう。最初は僕自身もハテナでしたけど、理由を聞き、実戦していくと、前に出たほうがゴールを決められる確率を低くできることに気づきました」

 まるでミレッGKコーチのように理論を説明したうえで、西川はステップの話に戻った。

「ステップについても、ここからここまでの距離は何メートルだから、細かいステップではなく、大股で1、2、3歩で飛べば届くという話もされました。昨季までとはポジショニングも変わっているのですが、ステップも変わったことで守備範囲も広くなりました」

 プロ18年目を迎えた西川に「今までやってきたことをリセットしてくれ」と伝えたミレッGKコーチだったが、今までどおり活かせている武器もあった。

 自身の特長のひとつでもあるキックだった。

 得意のパントキックについては特に指摘されることはなかったというが、シーズンが進むにつれて、その特長が発揮されている背景には、彼自身の成長により「余裕」が生まれたことが密接に関係していた。

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