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元レフェリー・家本政明が忘れられない、規格外の外国人Jリーガー。「いつも楽しそう」「まさにバケモノ」な選手たち (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

まさにバケモノ。とにかく速くてうまかった

オルンガ(FW/元柏レイソルほか)

 オルンガ選手は、まさにバケモノという言葉がハマる、ずば抜けて存在感がある選手でした。

 2020年の開幕戦、柏レイソル対北海道コンサドーレ札幌の笛を吹いたんですが、柏が4-2で勝ったうちの2点を彼が取ったんです。サイズの大きな選手はあまりスピードがないイメージがありますが、彼はとにかく速かった。

 柏の中盤から札幌DFの裏へボールが出て、それがどちらかというとGKに有利な位置に落ちたんです。当然、札幌のGKが飛び出して処理をしようとしたんですけど、オルンガ選手がギリギリで触ってかわし、そのままゴールを決めてしまうんです。

 しかも2点とも同じようなシチュエーションで奪っていて、あのサイズからは信じられないようなスピードがあって度肝を抜かれました。札幌のGKも苦笑いしていたのを覚えています。

 スピードだけでなく、ボールテクニックも抜群で、決定力もずば抜けている。まさにセンターフォワードの鑑のような、手のつけられない選手でした。

 それだけ驚異的な選手なので、とくにJ2の頃は相手がユニフォームを引っ張ったり、悪質なチャージだったり、あまりフットボールとは言えないやり方で、彼をなんとか抑え込もうとするプレーが散見されました。

 当然、ファールは取るんですが、レフェリーとしてはできるだけそうしたプレーは排除したい。守備側にはあくまでフットボールのなかで戦ってほしいという思いと、彼にそれさえも跳ね除けてプレーしてもらうためにはどんなコミュニケーションを取って、どう関わりを持てばいいのかを考えていました。

 そこで彼に限らずですが、厳密に言えばファールなのだけど、笛を吹かないことをある程度受け入れてもらっていました。と言うのも、前線でボールを収めて起点を作る選手に対して、守備側はどうしても強くいくわけです。でもその都度笛を吹いていては、試合がしょっちゅう止まってつまらなくなってしまいます。

 そこで「今吹くのが本当に試合と関わるみんなにとっていいのか」と常に考えながらレフェリングしていました。ただ、我慢が積み重なっていくと選手にとってはストレスになるので、どうストレスを抜いていくかも重要になっていきます。

 そこで彼にファールがあることを認識しているので、いつでも笛を吹く用意はできていると伝えつつ、相手の選手にもしっかりと注意しているところを彼にも見せながら理解してもらっていました。

 例えば彼がサイドでボールを持って、チームとしてチャンスの望みが薄そうな場面では割と簡単に笛を吹いて、相手選手に注意をして彼のストレスを下げます。逆に中央などで、そこを抜ければ決定的なシーンになりそうな場面ではできるだけ頑張ってもらう。そうやってメリハリをつけながら理解をしてもらいました。

 通常であればイライラが爆発してしまいそうなところでも、彼はある程度、冷静さを保ちながらプレーしてくれたと思います。ファールをものともせずに、相手を引きずりながらでもゴールを決めてしまうオルンガ選手は、本当に好きな選手でした。

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