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バルサ出身のFC東京スペイン人指揮官が語る「プロセス」に覚えた小さな違和感 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

攻撃的な戦いはできていない

 しかし、チームとしてのメカニズムは感じさせなかった。

 中盤にパスを入れる瞬間ひとつをとっても、周りの連動は乏しい。パスはつないでいても、フリックなど意外性は出せなかった。これはポゼッションを信奉するチームとしては致命的だろう。「ボールを大事にする」というのは、あくまで得点へのメソッド、あるいは理念であり、どうつなぎ、どう運び、どう崩すか、に眼目はあるはずだ。

 結局のところ、ゴールに迫る攻撃の大半は、レアンドロが個人で打開するなど、選手のフィーリングに頼っていた。フィーリングは、場当たり的とも言い換えられる。連係面の組織練度は低かった。

 そして後半になると、布陣や選手の入れ替えで修正してきた磐田を相手に、東京は守勢に回っている。

「後半はボールを多く失ってしまったのが課題。90分間、ボールを自分たちのものにできるようにトレーニングをしていかないといけない。これは監督就任初日から言い続けていることで、最後の日も語るだろう」

 アルベル監督は、名将の趣で総括した。

 ただ、最下位の磐田に主導権を握られ、完全に崩される形もあった。何度かあった決定機は、GKヤクブ・スウォビィクが立ちふさがることで失点を防いでいる。それが今シーズンのFC東京の本質だろう。

 失点数はたしかに少ないが、それは攻撃的に戦えているからではない。単純に各選手が体を張っているのと同時に、スウォビィクのゴールキーピング力が大きいだろう。磐田戦も直接的セービングは少なかったが、寄せの速さやポジショニングなどが際立ち、それがシュート精度を狂わせていた。

「今はプロセスにあって、3カ月前の我々と変わっているから、そこを見てほしい」

 アルベル監督はそう言って胸を張った。

「18歳の(松木) 玖生も台頭してきた。ブラジル人のレアンドロやディエゴ(・オリヴェイラ)も、アダ(イウトン)も必死に汗をかき、プレスをしてくれている。私は魔法使いではなく、チームの成長には時間がかかる。成功のプロセスは、長いスパンが必要だ」

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