元レフェリー・家本政明が挙げた印象深い元Jリーガー5人。「人格者」「ずるいプレーなし」「視野から消える」名手たち

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

元レフェリー・家本政明が感銘を受けたJリーガー 後編

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昨年Jリーグのレフェリーを引退した家本政明さんが、ピッチ上のいちばん近い位置から見てきたなかで「これはすごい!」と思ったJリーガーを挙げてもらう後編。ここではOB編として、引退した選手で印象に残っているプレーヤーとそのすごさを明かしてもらった。

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人柄とキャプテンシー。偉大なGK

楢﨑正剛(GK/元名古屋グランパスなど)

 楢﨑正剛選手は、"不動"という言葉がいちばん似合う人でした。バタバタせず、ゴール前に大きなものがドンとあるイメージです。

 シュートを打つ選手が、コースがないように感じていたシーンが本当に多かったです。彼にビッグセーブがたくさんあるように感じないのは、それだけいいポジションで止めることができていたんだと思います。

 うしろに楢﨑選手がいるから最後はなんとかしてくれるというのは、チームメイトにとって大きな安心感に繋がっていたと見えましたし、彼が守っている時に名古屋グランパスがバタバタしている印象はほとんどありません。

 とくにリーグ優勝した2010年シーズンは、センターバックの田中マルクス闘莉王選手や増川隆洋選手、MFには中村直志選手など中央が本当に強固でしたが、その中心はやはり楢﨑選手の存在だったと思います。

 名古屋で長くキャプテンをしていたので、チームを代表して彼とコミュニケーションを取るケースは多かったです。判定上、なにか思うことがあった時は、試合が終わって仲間たちを抑えながら冷静に「あれはどうなんですか」と、怒りに任せたものではなく質問してくれました。

 そこで私も「僕はこう見て、こう判断しただけで」と言うと、「我々としてはこう思うんですけど」と、お互い落ち着いてコミュニケーションを取ることができた選手でした。非常に人間として尊敬していますし、ありがたかった思いもたくさんあった選手ですね。

 誰が一番と言うつもりはないですが、日本人GKのOBで誰かと聞かれたら真っ先に頭に浮かぶのが楢﨑選手です。人柄もすごく温厚で、キャプテンシーもあって、そういうところもすべて含めて、本当に偉大なGKだったと思います。

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