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横浜F・マリノスがACLを勝ち抜いた"非森保的"選手起用法。日本代表にも「先を見越した戦い」が必要だ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

横浜FMの「先を見越した戦い」

 この16日間で横浜FMの結束力は、さぞや高まったのではないか。それに呼応するようにチームの総合力も高まったのではないか。

 中2日で6試合。この強行日程で想起するのは、東京五輪の戦いだ。3人のオーバーエイジを含むU-24日本代表は、3位決定戦までACLとほぼ同じスケジュールで戦った。その時の森保一監督の戦い方とマスカット監督の戦いぶりを比較すれば、その違いに驚くことになる。選手をローテーションできなかった理由について、森保監督は五輪後、こう述べた。

「先を見越して戦うことはまだできない。世界の中で日本が勝ち上がろうとした時、1試合1試合フルで戦いながら次に向かっていくことが現実的である」

 旧態依然とした残念な台詞と言うしかない。今回、ローテーションで戦った監督はマスカット監督に限らない。5人の交代枠を6試合すべて使い切ったのはマスカット監督だけだったが、浦和のリカルド・ロドリゲス監督(5人交代は6試合中5試合)も、川崎の鬼木監督(6試合中5試合)も、神戸のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(4試合中3試合)もほとんどの試合で交代枠を使いきっており、全員が"非森保的"だった。

 W杯本大会は、おおよそ中3日の戦いだ。そこでベスト8を目指そうとすれば、試合数は5試合を数える。「先を見越して戦うことはまだできない。世界の中で日本が勝ち上がろうとした時、1試合1試合フルで戦いながら次に向かっていくことが現実的である」では、ベスト8まで勝ち上がるのは無理なのだ。

 話をACLの横浜FMに戻せば、6試合540分間でフルタイム出場したのはGK高丘陽平のみ。フィールドプレーヤーで最も多く出場した岩田智輝でさえ432分だ。以下、喜田拓也(425分)、小池龍太(360分)、西村拓真(314分)と続くが、マスカット監督は出場した24選手中、21人に100分以上出場機会を与えている。それでいて、苦戦しながらもグループを首位通過した。いまひとつ物足りなかった試合内容より、この事実のほうが重要だ。五輪代表監督が「先を見越した戦いはできない」と言い放つ日本においては。

 ACLグループステージ。最も目を凝らすべきは、マスカット監督をはじめとする、Jリーグ勢監督の選手の起用法だった。森保采配と比較すれば、どちらに理があるか、一目瞭然となるはずだ。

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