今季J1の「台風の目」京都サンガがエグい。対戦相手に突きつける課題が難易度MAX (2ページ目)
試合終盤、DFを増やして5-3-2へとシフトチェンジしてもなお、前線からのプレスが弱まることはなかった。
事実、2点を追う柏は選手交代で活性化を図り、反撃を試みようとはしていたが、チャンスを作るどころか、思うように前進することさえできていない。
先制ゴールを決めたDF荻原拓也が、誇らしげに語る。
「90分を通して疲れたなかでも集中力をきらさず、予測を持ってプレーできたと思う」
だが、アグレッシブなプレスで相手を封じ込める京都も、逆説的に言うならば、その成否のカギを握っているのは、"最も守備をしない選手"なのではないだろうか。
すなわち、FWピーター・ウタカである。
センターフォワードを務めるウタカは、当然ピッチ上の最前線に立っている。京都はハイプレスを武器にしているチームなのだから、ポジション的にはその先陣を切る役割を担っていても不思議はないが、ウタカの場合、そうではない。
もちろん、まったく守備をしないわけではない。だが、他の選手のハードワークと比較すれば、実質免除されていると言ってもいいだろう。
ウタカは今季リーグ戦全9試合に先発出場し、うち8試合はフル出場。残る1試合にしても89分の交代だから、事実上、全試合にフル出場している。ハイプレスが売りのチームのセンターフォワードとしては、ほとんどありえない出場時間である。これこそが、守備を免除されていることの確かな証拠だろう。
では、ウタカは何をしているのか。ファーストディフェンダーとして守備に奔走するのではなく、最低限のタスクだけをこなしたあとは、攻撃に切り替わった瞬間に備えるのである。
つまり、常にピッチ上をふわふわと漂い、味方がボールを奪った瞬間、ゴールに直結する動き出しを見せるのだ。
それが表れていたのは、前半8分のシーンである。
MF武田将平が高い位置で相手のパスをインターセプトするや、ウタカはすぐさま半身の姿勢で相手DFとの間に距離をとり、パスコースを作る。
その動きを見逃さなかった武田がすぐにパスを送ると、ウタカは独力でシュートまで持ち込んでみせた。
結果的にシュートは相手DFにブロックされたものの、鮮やかな速攻だった。
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