「フロンターレは死んでいない」。中村憲剛たちが積み上げたクラブの風土なくして、その言葉は生まれなかった (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

引き継いだチーム編成の哲学

 スケジュールの都合で会議などが入ることもあるが、竹内は「基本的には自分もグラウンドに立つことをベースにしています」と言う。現場を第一とする庄子の教えだった。「文脈を見ているから、監督が試合で起用した理由も理解できるし、采配の意図を擦り合わせることもできる」と話す。

「ただ、餅屋は餅屋じゃないですけど、サッカーについては監督やコーチが選手と話をするべきだと考えています。強化部は影響力が強いだけに、最後の砦でもある。プレーを褒めることはありますけど、日常的な会話にとどめるように心がけています。

 選手たちには、空気みたいに感じてもらえたらいいなと。いい時も悪い時も、いざという時に『いつも見ている』ということが大事になってくるので」

 ピッチ内のことは鬼木達監督に全幅の信頼を寄せる一方で、「空気感」と同じく「風土」をなくさないように努めているとも言う。庄子から受け継いだチーム編成における哲学だった。

「会社にも企業風土というものがありますよね。技術にこだわる職人気質な企業もあれば、外に目を向けることを重要視している企業もある。フロンターレも創設から26年目を迎えましたが、中村憲剛をはじめとする選手らが積み上げてきた"風土"というものを大事にしていきたい。

 それがあるから、昨季も田中碧(→デュッセルドルフ)、三笘薫(→ユニオン・サン=ジロワーズ)が移籍してチームが苦しい状況では、小林悠が『フロンターレは死んでいない』という言葉を発して、チームを奮い立たせてくれた。

 フロンターレでは頑張らないヤツは、自然と浮いてしまう。そうしたやはり空気であり、組織力というもの大事にしていきたい」

 今季のフロンターレは言わずもがな、リーグ3連覇とAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の制覇を目標に掲げている。

「すべてのタイトルを目指しつつ、今季の目標として特にそのふたつを掲げているのは、3連覇は過去に鹿島アントラーズが達成(2007年〜2009年)していますが、JリーグとACLを同時に獲ったチームはいまだにない。その初めてのクラブになりたい、という思いは強いですね」

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