ヴィッセル神戸の菊池流帆、今年は「なにがなんでもW杯に出たい」。Jリーグで存在感を増す野性的CBの魅力と素顔 (2ページ目)
オフには本を読んだり、文章を書いたり
そんな左利きの海千山千は、今年1月に現役を退いた。ただし既存戦力やニューカマーも、元パートナーに引けを取らないほど頼もしいと、菊池は語る。
「小林(友希)選手とは昨季も組んだことがあるので、すでにわかり合えているところはあります。新加入の槙野(智章)選手は経験が豊富で、コーチングがすばらしい。周りを的確に動かしてくれます」
またアンドレス・イニエスタという真のワールドクラスや、日本代表の大迫勇也たちからも、大きな刺激を受けている。
「イニエスタ選手はうますぎて、何かを学ぶというのは......(笑)。でも本当に、トップレベルのチームメイトたちからは、プレーだけではなく、人間性や生活面、取り組む姿勢、プロフェッショナリズムなど、見習う点は多いです。いいお手本が近くにいて幸運だし、彼らを超えるくらいになっていきたいですね」
菊池のこれまでを振り返ると、それが大言壮語ではないことがわかる。中学2年生の時、彼は出身地の岩手県釜石市で東日本大震災に遭い、グラウンドや小学生時代のコーチなどを失った。「ロウソク一つで恐怖と悲しみの中毛布に包まって眠りについた」と自身のnoteに、当時の状況を記している(原文ママ)。
その後、三浦知良らプロ選手が当地を訪れ、一緒にボールを蹴った菊池少年は、自分もプロになることを決意したという。青森山田高校には一般入試で入学し、Dチームから這い上がって3年時にレギュラーとなり、大阪体育大学を経て2019年にレノファ山口に入団。
釜石市出身の初のJリーガーになると、そこからの3年間で、リーグを代表するCBのひとりに成長している(昨季はJリーグ優秀選手賞に選出された)。
「ずっと雑草魂でやってきました」と菊池は言う。「ブレずにやってきた成果が出ているのかなと思います」
ただその姿勢は、がむしゃら、とはちょっと違う気もする。少年時代からサッカーノートをつけ、この取材の前日にも「本を3冊買った」という彼は、言葉を大切にしているように見える。
常に学びを得ようとし、オフには「本を読んだり、文章を書いたり、犬と神社に行ったり」することが多いという。ちなみに、飼い犬は「かわいいトイプードル」だ。時に荒ぶる姿を見せるピッチ上との落差もまた、菊池の魅力のひとつに思える。
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