武田修宏からJリーグへのメッセージ。「クラブも選手も色・個性を追求してほしい」 (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

【ストライカーが生まれにくい日本】

――どのクラブも目標はと聞かれると、『優勝』と答えがちです。J1で優勝できるクラブは実際、限られているにもかかわらず。

「現場の指導者は優勝できないことはわかっています。ただ、残留を争うチームと思っていても、優勝を目標に掲げないとスポンサーが集まらないということもある。サッカーをよく知っている人がもう少し上層部にいると、いいのかなと思います。

 また、クラブはもちろん、指導者、選手にも色を持っていただきたい。指導者には哲学がほしい。今の時代、打ち出しにくいのかもしれませんが、武田修宏だったら、観衆はドリブルを見にきてるわけではない。ゴール前のこぼれ球を狙う姿ですよ。三浦知良といえば、またぎフェイントとか。ラモスだったらスルーパスとか。お客さんはそうしたものを楽しみにスタジアムに来ると思うんです」

――そういえば、武田さん的なストライカーを最近、特に見かけません。

「環境がそうさせるのかもしれません。岡崎慎司と話をした時、『海外では結果がすべてであるのに対し、日本は内容を重視する』と言ってました。いい形とか、ビルドアップとか。海外は結果でしか判断しない。

 僕なんか、子供の頃からサッカーがヘタだったので、とにかく何点とったという数字を出して、結果のなかでしか生きてきませんでした。12歳の時から(年代別)日本代表に選ばれて、点をとって当たり前という中なかでプレーをし、プレッシャーさえも力に変えて、メンタルが強くなり、成長できたと思います。ロマーリオが好きで、ワールドカップの際に待合室でインタビューしたことがあるのですが、「1点には人生を変える意味と意義がある」と彼も言ってました。

 その重みを感じる環境が日本にはない。日本では強引に打ってはダメだとか。結果より形でしょう。キーパーコーチっていますけれど、ストライカーコーチもほしいですね。『いいプレーをしても結果が0点ではダメだ』と。そういう話を選手にしてあげることが必要です。『FWは前線から守備をして......』と言いますし、守備は確かに重要ですけれど、それで0点でいいのか。先日、カズさんと一緒にトレーニングしたのですが、1点の重要性について一番考えているのはカズなのかなと、あらためて思いました。
 
 ストライカーは〇か×かなんです。△はない。まあまあはない。称賛されるか、罵倒されるか。時代が変化していくなかで、そういうストライカーをどう育てるか。岡崎は『こちらの選手はエゴイストだらけ』だと言ってましたが、でも点をとれば評価される。やさしくてうまい日本人選手はたくさんいるけれど、エゴイストはいない」

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