杉本健勇、苦悩の夏。「練習に行くのもイヤ。朝がくるのもイヤで逃げ出したかった」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • photo by (c)JUBILO IWATA

「その頃が人生で一番つらかったですね」

 杉本は沈み込んだ声でそう言った。

「自分は、弱音とか吐きたくないんですよ。人に『めっちゃキツいわ』とか言えない性格ですし、逆にずっと強い自分を見せていたんです。でもそれって、ぜんぜん強くなくて......。あとで、弱い部分を見せられるところに強さがあることに気づくんですけど、その時はひとりですべてを抱え込んでいました。

 正直、練習に行くのもイヤでした。とにかく、朝がくるのがイヤなんですよ。『もう朝か。もう(練習に)行かなあかんのか......』って感じで。(今ある現状から)逃げ出したかったですね」

 そんな精神状態にもかかわらず、チームではいつもどおり明るく振舞っていた。

「不安とかヤバいとか、そういう感情は1ミリも出さなかったですね。だから、たぶん他の選手やファンは『(杉本は)試合に出れていないし、活躍できていないな』というぐらいにしか見えていなかったと思うんですけど、自分のなかではとんでもないくらいキツかった」

 結局、2019年シーズンは21試合出場(先発6試合)2得点。リーグ優勝の担い手として期待された選手としては、さすがに物足りない成績だった。

 批判的な声は増すばかりだったが、誰よりも杉本自身がその不甲斐ない数字に悔しさを感じていた。チームも優勝争いはおろか、J2降格危機に直面する14位という結果に終わっただけに、なおさらだった。

 移籍2年目の2020年シーズン、大槻毅監督が新たな指揮官となった。杉本は、33試合出場2得点。移籍1年目に比べて出場試合は増えたが、先発はわずか11試合にとどまった。前年同様に途中出場が多く、満足するような結果は残せなかった。

「もうちょっと長い目で見て使ってほしいなという気持ちもありましたけど、それも『自分が点をとれないから』というのはわかっていました。それで、不甲斐なさや悔しさはずっと感じていましたけど、自分と向き合うことができていたので、1年目ほどストレスを抱えることはなかったです」

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