槙野智章の目立ちたがり屋精神に衰えなし。「先頭に立って盛り上げたいし、笑いを取りたい。俺を見ろ」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by (C)VISSEL KOBE

【浦和レッズに恨み節は?】

 すでに気持ちを切り替え、神戸の選手として新たなスタートをきっているのだから、これを聞くのは野暮だろう。それでもどうしても聞きたかったのは、槙野の本音である。だから、意を決して尋ねてみた。

「契約を更新してくれなかった浦和に対して、恨み節はないのですか?」と。

「いやいや、全然ないですよ。こうやって神戸に来られたのはすごく幸せなことだし、新しく一緒に戦える仲間と出会えたり、一緒に働けるスタッフと出会えたので、毎日が充実しています。

 もしかしたら、なるようになっていたのかなとも思います。そのまま浦和にいて引退していたら、こういう出会いはなかったわけですから。

 人生一度きりと言いますけど、プロサッカー選手としてやり続けるなかで、移籍は決してネガティブなことばかりではなくて、新しい出会いとか、人間力を高めるためにはすごく大事なことだと思う。だから、僕は神戸に来られて幸せだし、よかったと思っています」

 さすがはポジティブ男である。過去を振り返らず、新しい発見に喜びを見出す。そうやって前を向き続けるからこそ、この男は人を惹きつけ、愛され続けるのだろう。

 その神戸で槙野はさっそく、新たな試みを行なうという。

「『槙野シート』というものを設けたんですね。今季のホームゲームの全試合に30人を招待します。たくさんの方にヴィッセル神戸というチームを知ってもらいたいですし、スタジアムに足を運んでもらいたいという想いから、設置させていただきました。

 そのなかで試合ごとにテーマを設けて、たとえば20代をターゲットにしたり、いつも子育てを頑張っているお母さんたちを招待したり、ヴィッセル神戸の選手に将来なりたいという夢を持つ子どもたちを招待したり。そうやって直に見てもらうことで、サッカーのすばらしさ、ヴィッセル神戸のすばらしさを広めたいと思っています。

 まずはミーハーでもいいので、サッカーって楽しいじゃんと思ってくれればうれしいですね。詳細はヴィッセル神戸のホームページで。みなさん、どしどしご応募ください!」

【profile】
槙野智章(まきの・ともあき)
1987年5月11日生まれ、広島県広島市出身。2006年、サンフレッチェ広島ユースからトップチームに昇格。プロ2年目からレギュラーに定着し、2010年12月にドイツのケルンに完全移籍を果たす。2012年に帰国して浦和レッズで10年間プレーしたのち、今シーズンからヴィッセル神戸へ。日本代表ではこれまで38試合に出場して4得点。ポジション=DF。身長182cm、体重77kg。

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