育成年代に関わる中村憲剛が試合を観てきて感じたこと。「その声掛けは本当に子供のためになっているのか」
U-12世代の現状について熱く語る中村憲剛氏
中村憲剛インタビュー前編
現役を引退して約1年。この間、育成年代の環境に積極的に触れ、指導にも関わってきた中村憲剛氏。若年層の強化と普及に関わる活動を通して、後進の育成に尽力する「JFAロールモデルコーチ」として、2021年の年末に開催された小学生の全国大会「JFA第45回全日本U-12サッカー選手権大会」にもメッセージを寄せた。さらにこの大会のいくつかの試合を分析し、好プレー動画も作成している。
そんな中村氏に、この全国大会の準決勝・決勝から見えたU-12世代の現在地と、プレーをするうえで大切なことを伺った。
【決勝はバチバチだった】
ここ数年の全国大会を観て感じていること。それは子供たちが年々うまくなっているということです。その点に関しては間違いないです。現在はインターネットの普及で、子供たちだけではなく、指導者の方たちや親御さんもありとあらゆるサッカーに関するプレー動画や解説動画などを見ることができます。なので、それを参考にすればある程度自分たちでできますよね。大人であれば「これは自分にはできないな」と思ってやらないようなすごいプレーでも、U-12世代は無理でもチャレンジするので、やっぱり吸収が早いんですよ。
それから今の指導者の方たちは、僕の子供時代に比べて、入ってくる情報量がはるかに増えていますし、子供たちを取り巻く今の環境を考えれば、彼らがうまくなる理由はちゃんとあるわけです。
今大会を観ると、テクニックとフィジカルが融合した大会だったなと思っています。とくに強度が高かったですよね。昨年度の決勝、「FCトリアネーロ町田対ジェフユナイテッド千葉」は、テクニックとスピードが特徴的でしたが、今年度の決勝、「レジスタFC対鹿島アントラーズ」(3-0でレジスタが優勝)は、テクニック、スピードに加えてハードワークとプレー強度が目立ちました。どちらもバチバチでしたよね。鹿島も強度が非常に高かったんですが、レジスタはそれ以上に強かった。抜かれてもさぼらないでカバーに行ってみんなで守る。鹿島を完全に抑え込んでいました。
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