高校サッカー界は新たな時代へ突入か。神村学園が青森山田とは「違うサッカー」で勝利し「ひとつの歴史を作った」という意味 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 自信の源となっていたのは、昨年12月のプレミアリーグプレーオフ(翌年のU-18プレミアリーグ入りをかけた参入決定戦)。ここでセレッソ大阪U-18に2-1と逆転勝ちした神村学園は、この勝利をきっかけに「劣勢でも粘り強くやれている」(神村学園・栢野裕一監督代行)という。

 今大会でも、初戦(2回戦)の山梨学院(山梨県)戦は先制されながら、前半のうちに逆転。後半に一度は追いつかれるも再び勝ち越して、3-2と勝利している。栢野監督代行が語る。

「積み上げてきたものを出せている。そこは成長。(前半劣勢でも)後半勝負ということで余裕を持ってやれている」

 とりわけ神村学園らしさ、すなわち、ボールを保持して攻撃を組み立てるスタイルが存分に表れていたのは、青森山田戦での2点目のゴールだ。

 相手の決定機をGK広川豪琉が防いだ直後、神村学園はクリアで逃げずにパスをつなぎ、大迫が自陣右サイドのゴールライン手前でボールをキープ。そこへMF高橋修斗がサポートに入り、青森山田のプレスをかいくぐると、高橋からのパスを受けたFW西丸道人がドリブルで前進し、左から上がってきたMF名和田我空へ一度ボールを預け、自身はゴール前へ。

 バイタルエリア右で名和田からのリターンパスを受けた西丸が、カットインしながら左足でシュートを放つと、最後はDFに当たってこぼれたボールを、エースストライカーのFW福田師王が左足で押し込んだ。

 ピッチの縦いっぱい、およそ100mもの距離を1本のロングボールではなく、パスとドリブルを巧みに組み合わせて前進し、最後はペナルティーエリア内に5人が詰める。これほど厚みのある攻撃を仕掛けられては、さすがの青森山田も防ぐことはできなかった。

「神村の攻撃は自分から始まる。自分が(ボールに)触ることで、得点の確率も不思議と上がる」(大迫)

「狙っていたので、こぼれてきてよかった。(左足の)アウトでチョンとつついて、相手に触られないように早く打った」(福田)

 試合はその後、青森山田が前線の枚数を増やし、サイドからの攻撃を仕掛けるも決定機には至らず、2-1のまま試合終了。

 青森山田の連覇の夢を打ち砕いた神村学園が、初出場だった85回大会以来となる、16年ぶりのベスト4進出を果たした。

 体調不良の有村圭一郎監督に代わり、今大会初戦からチームの指揮を託されている栢野監督代行が語る。

「『強い鹿児島を取り戻す』と言ってやってきた。今は青森山田が(かつての)鹿実(鹿児島実)みたいになっているが、時代を変えたい、(青森山田とは)違うサッカーで日本サッカーを盛り上げたい、と思ってやってきた。(この勝利で)新しい時代、ひとつの歴史を作った部分があるのではないかと思う」

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