高校サッカー界は新たな時代へ突入か。神村学園が青森山田とは「違うサッカー」で勝利し「ひとつの歴史を作った」という意味 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 その言葉どおり、かつての選手権を振り返ると、鹿児島実が全国屈指の強豪校としてその名をとどろかせていた時代が確かにあった。過去に2度の選手権制覇を成し遂げているばかりでなく、遠藤保仁、松井大輔ら、数多くの名選手を輩出してもいる。

 だが、"鹿実以後"の鹿児島県勢はというと、鹿児島城西と神村学園が2強を形成するも、選手権優勝はなし。大迫勇也を擁した鹿児島城西が87回大会で準優勝したのを最後に、優勝はおろか、ベスト8進出すら神村学園が88回大会で一度あるだけだ。

 鹿児島県勢にとっての選手権は、すっかり高い壁となってしまっていた。

 対照的に、鹿児島県勢と入れ替わるように強豪校へとのし上がってきたのが、青森山田である。

 鹿児島城西が準優勝した翌年(88回大会)、選手権で初の決勝進出を果たした青森山田は、95回大会で選手権初優勝。94回から今大会までの8大会で優勝3回、準優勝2回、3位1回と、圧倒的な実績を残している。

 フィジカル面を鍛え、攻守の切り替えを磨き、勝利のために徹底的に無駄を削ぎ落した青森山田のサッカーは、ボールを保持した攻撃的なスタイルを志向するチームにとっての鬼門となって立ちはだかってきた、と言ってもいいだろう。

 だが、そんな王者・青森山田を向こうに回し、しかも相手の勝ちパターンに持ち込まれながら、神村学園は逆転勝利。「ひとつの歴史を作った」という表現も、あながちで大げさではないのかもしれない。

「試合前から、歴史を変えようという意気込みだった」(福田)

 ドイツの名門、ボルシア・メンヒェングラートバッハ入りが決まっている福田、同じくセレッソ大阪入りする大迫と、どうしても二枚看板ばかりが注目を集めがちな神村学園だが、それ以外のタレントも豊富にして多彩。青森山田戦では、交代出場の選手が貴重な働きを見せ、逆転勝利に貢献した。

 また、次の岡山学芸館との準決勝では有村監督も復帰し、ベンチで指揮を執れるとのこと。前回王者を退けて勢いに乗るチームは、いよいよ初の全国制覇へ向け、最高の状態が整いつつある。

「ここから強い鹿児島を取り戻せたらいい」(栢野監督代行)

 鹿児島県勢が14年ぶりに国立の舞台に帰ってきた。

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