高校サッカーで何が起こっているのか。選手権に初出場はわずか2校。常連、強豪を破ってつかんだ取り組み

  • 森田将義●取材・文 text by Morita Masayoshi

第100回全国高校サッカー選手権特集

 全国高校サッカー選手権が、12月28日に開幕する。

 記念すべき第100回大会を迎える今大会の上位候補を見てみると、昨年度のベスト4に入った山梨学院(山梨県)、青森山田(青森県)、矢板中央(栃木県)、帝京長岡(新潟県)の4校が今年も順当に出場権を獲得。

 今夏のインターハイで上位となった米子北(鳥取県)や星稜(石川県)、静岡学園(静岡県)も出場を掴むなど、顔ぶれが安定している。ほかを見ても、見慣れた常連校の名前が並んだ。

 全国にリーグ戦が整備されてから10年以上が経過し、強豪校に進学しても公式戦に出られないといった現象は過去の話だ。例えば、青森山田はAチームが国内最高峰のプレミアリーグ、Bチームがプリンスリーグ東北に所属。他の強豪校もAチームは各地域のプリンスリーグ、Bチームは県内のライバル校と肩を並べて県1部リーグに所属するケースが多い。

 強豪校は練習環境が整い、優秀な指導者が揃っていることが多いため、プレーする選手たちにとっては、以前より県の強豪校以外に進む旨味は少ない。つまりサッカーに力を入れ始めた新興校が力をつけるのは簡単ではなく、じつは今年初出場を果たしたのはわずか2校しかない。

【県リーグ3部所属が無失点突破】

 1つは愛知県の中部大第一だ。2014年にJリーグ創設時の名古屋グランパスの守護神だった伊藤裕二監督を指揮官に迎え、強化をスタートさせた。翌年には新指揮官が声を掛けた選手たちが多数入学し、彼らが3年生になった2017年には選手権予選のベスト8まで進んだ。

愛知県から初出場をつかんだ中部大第一(写真:中部大第一サッカー部提供)愛知県から初出場をつかんだ中部大第一(写真:中部大第一サッカー部提供)この記事に関連する写真を見る 順調なスタートをきったかのように思えたが、そこから先が難しかった。愛知県は「中学年代の上から50番目までの選手が県外に出ていく」と言われる輸出県であり、有力選手の獲得は簡単ではない。サッカー部に力を入れる私学も多く、2015年以来選手権の出場は毎年入れ替わる激戦区でもある。2020年の選手権予選でも、ベスト8で涙を飲み、「どこかでベスト8を破れないというのはあった。ここが壁だと感じていた」と伊藤監督は振り返る。

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