J2ウォッチャー平畠啓史さんの2021シーズン総括。そのインタビューやチーム作りに「何度も参りました」と思わされた監督とは? (4ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • photo by Getty Images

【監督インタビューが面白かった】

――今季気になったクラブはありますか?

「今季はJ3から上がってきたクラブが、すごく健闘した印象があります。特にブラウブリッツ秋田は、昨シーズンのスタイルをそのまま貫いた。さきほどスタイルの話をしましたが、相手がわかっていても自分たちのスタイルを貫く。相手もお客さんも相手サポーターも秋田がどんなサッカーをしているかわかっているけど、それを貫いていくのがかっこいいし、僕はすばらしいと思います。

 吉田謙監督はアスルクラロ沼津の時もそうですけど、ある種色気のないと言うんでしょうか、でもそこが見ていて、胸に迫ってくる。潔さというか、見ていて気持ちいいですね。

 あとは高木琢也監督になってからの相模原ですよね。高木さんはすげえなって思いました。チームを立て直し、あの短期間でしっかりとチームを作っていく。選手も新しく加えて、ボールも持てるチームを作っていきました。

 J2って監督インタビューが面白いんですよ。J2の監督さんは特徴があるので。昨年から引き続き、試合前、試合後は水戸ホーリーホックの秋葉忠宏監督と秋田の吉田監督は僕がすごく楽しみにしていたインタビューでした。

 今シーズンは高木監督の言葉を聞くたびに「うわあ、この人すげえな」って思うことが何度もありましたね。特に第40節の愛媛戦の試合後ですね。「自分たちも同じ立場で、もしかしたら愛媛と同じことになっていた可能性があった」と。もっと浮かれてもいいような勝ち方だったと思うんです。そこで、負けた愛媛に対して思いやる思慮深さ。自分たちも同じようにかなり苦しい切羽詰まったギリギリの状態で戦っているのに、大局観というか、本当に目の前だけじゃなくて、すごく大きい目線でサッカーを見ているなって。

 あとヴァンフォーレ甲府戦だと思うんですが、「上回るために何が必要ですか?」って試合前に聞かれた時に、「サッカーのポゼッションとか、シュート数とかで甲府を上回る必要はありません、スコアで上回ればいいんです」と。それで本当に試合に勝ってました。スタッツ見るとシュートもパス数もポゼッションも全部甲府のほうが上回ってたんです。それで『この人本当にすげえな(笑)』って思いました。

――高木監督は年々すごみが増している感じがありますね。

「おっしゃるとおりですね。ギラヴァンツ北九州の小林伸二監督もそうやけど、『小林伸二さんってこんなサッカーでしょ』ってJリーグを見ている人のイメージがあったじゃないですか。でも昨年、北九州で『これが伸二さんのサッカーなの?』みたいなサッカーをやった。やっぱり僕らが思っている以上に、サッカーの監督さんって引き出しがものすごくいっぱいあるんですよね。

『高木琢也監督って結構守り重視してるんでしょ』というイメージを僕らは勝手に持ちがちですが、相模原では、若い選手を起用してちゃんとボールをつないで、ゲームもコントロールするサッカーを、あの短期間で作り上げていった。本当にすごいですよ。上位で戦っているチームじゃなくて、勝ち点1でも欲しいチームでしたから。高木監督はもっともっと評価されてほしいと思います。今シーズンは高木さんに何度も『参りました』って思いました」
(後編へつづく>>)

平畠啓史
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ。大阪府出身。芸能界随一のサッカー通として知られ、サッカー愛溢れる語り口が人気。サッカー関連番組の出演や著書も多く、昨年は「平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 日本全国56人に会ってきた」(ヨシモトブックス)を出版した。

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