長友佑都は欧州からJ復帰で活躍できるか。中村俊輔から清武弘嗣などの例に見る成功の条件 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 一方、Jリーグは良くも悪くも「組織」が基本にある。協調性の中で、お互いが尊重し合う。例えばチャレンジ&カバーが徹底され、集団として戦えない選手は使われない。逆に、個人の失敗への許容範囲が狭く、崩しやクロスでは欧州や南米より成功率の高さを求められ、結果的に、石橋を叩いて渡るようなプレーが多くなるのだ。

 欧州で長年プレーしていた選手は、"欧州型"のプレーリズムや感覚を身につけている。日本に戻っても、すぐにはそれを脱ぎ捨てられない。必然的に周囲と合わない部分が出る。マイナーチェンジをせざるを得ないが、そこで無理をしてコンディションを悪くしたり、持ち味を出せずに悩んだりすると、悪い流れに乗ってしまうのだ。

 高原直泰は、南米アルゼンチンのボカ・ジュニアーズで半年過ごした後、ジュビロ磐田に復帰した2002年シーズン、JリーグMVP、得点王の二冠を獲得した。当時は半年という短い期間が刺激になり、エコノミー症候群で日韓W杯を棒に振った無念さなどへの反発もあっただろう。古巣復帰ではストレスなく実力全開だった。ただその後、ドイツで5シーズン半を過ごした後、鳴り物入りで浦和レッズに入団したシーズンは期待された活躍ができていない。

 欧州でのプレーは、選手を経験豊かにさせると同時に、本人に無自覚の消耗も強いている。消耗の種類はさまざまだろう。海外では適応するだけで心身ともに身を削るもので、さらにプレー機会が奪われたり、チームの降格や契約解除で居場所を失ったり、不確定要素と常に向き合うことになる。それは成長を促す一方、精神も肉体も疲弊させるのだ。

 Jリーグに復帰したら活躍できるというのは楽観的すぎるだろう。

 これまでの復帰の例を見ていると、古巣へ戻ることはひとつのアドバンテージになるかもしれない。関係者が残っていれば、勝手を知っているのもあるだろう。ファン・サポーター・メディアにも長い目で見てもらえる。

 大久保嘉人(C大阪)は、二度にわたって欧州から同じチームに復帰している。一度目はC大阪→マジョルカ→C大阪。二度目は神戸→ヴォルフスブルク→神戸。復帰したC大阪では降格の憂き目を見たが、本人は神戸に移籍し、再び欧州へ。復帰後の神戸でもチームは不調だったが、大久保は代表に選ばれ、南アフリカワールドカップでのベスト16進出に大きく貢献した。

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