川崎フロンターレ相手にやってはいけないこと。「撃ち合う」は〇でも「下がる」は×

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 今シーズンもJ1リーグは川崎フロンターレが猛威を振るっている。優勝した昨シーズンは、9人の川崎の選手がベストイレブンを受賞したが、その勢いは衰えていない。三笘薫のドリブルからのシュートは、サッカーファンでなくともわかるスペクタクルだ。

 果たしてその進撃を止める手立てはあるのか――。

 前節(4月11日)、長谷川健太監督のFC東京は、多摩川を挟んだライバルとして、川崎を本拠地で迎え撃った。

「撃ち合う」

 長谷川監督は戦う前に、選手たちへそう伝えたという。そのメッセージはおそらく、正しい。しかし、その真意は伝わっていたか......。

 川崎を相手にやってはいけないこと、やるべきこととは?

FC東京戦では前半17分までに2得点を挙げた家長昭博(川崎フロンターレ)FC東京戦では前半17分までに2得点を挙げた家長昭博(川崎フロンターレ) 結果から言えば、FC東京は川崎の攻撃力に屈し、2-4で敗れている。それも前半20分経たないうちに、敗色は濃厚になっていた。

 FC東京は基本布陣だった4-3-3ではなく4-4-2で挑み、裏へ蹴り込んでのカウンターではなく、「ボールをつなげよう」という意図が見られた。川崎を相手に守りを固めても、ボールを明け渡したら勝負にならない。この1年でそれを実践しているのが、コンサドーレ札幌、サガン鳥栖、大分トリニータで、彼らは戦力的に劣るにもかかわらず、互角の戦いを繰り広げている。

 その点でFC東京の戦略は間違いではなかった。

 しかし川崎の圧力のためか、チーム編成の問題か、FC東京の選手たちはずるずると下がって、攻撃を受けてしまう。結果的に、序盤から自陣に押し込められる羽目になった。自ら守備を固めたわけでもないため、どこかで後手を踏んだ。

 サイドからの強力なコンビネーション攻撃に、明らかにてこずっている。たとえばFC東京の右サイドバックの中村拓海は三笘を見つつ、インサイドハーフ、サイドバックの動きにも悩まされた。絞れば外を使われ、外に出れば中を使われる。その混乱は左の家長昭博からも受け、次第に乱れが拡散していった。そして自陣に押し込まれると、必然的に"事故確率"も増える。

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