Jリーグで監督のキャリアアップによる「動き」が活発化しないのはなぜか (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 Jリーグでも、最近でこそ選手の移籍が当たり前になってきた。より上のカテゴリーへ、あるいは、より強いチームへ。移籍によってステップアップしていく選手は増えている。

 だが、それが監督となると、意外と動きが目立たない。

 ヨーロッパなどであれば、規模の小さな地方クラブで成果を残した監督が、中堅クラブへ、さらにはビッグクラブへと引き抜かれていく例は、決して珍しくない。むしろ、それが当たり前のキャリアアップかもしれない。最近で言えば、ボルシアMGのマルコ・ローゼ監督が、今季終了を待たず、すでに来季からドルトムントの指揮を執ることが決まっている。

 しかしながら、日本では、優れた成果を残した監督が翌シーズンには他クラブに引き抜かれたという例は、今季の徳島のような昇格クラブに限らず、ほとんどない。

 そもそもJリーグの場合、クラブの序列がはっきりしないことも、その理由のひとつだろう。J1からJ2のクラブへ移籍したら年俸が上がった、などという選手もいるくらいだから、どのクラブからどのクラブへ移ることがキャリアアップなのか、わかりにくい面は確かにある。

 加えて、これがもっとも大きな理由だろうが、日本人ならでは"情"が、そうしたドライな動きを活発化させないのだろう。

 その結果、監督が移籍していく例は、今回のロドリゲス監督をはじめ、外国人指揮官が中心となる。その数にしても決して多くはないが、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(2018年東京ヴェルディ→2019年セレッソ大阪)やミハイロ・ペトロヴィッチ監督(2011年サンフレッチェ広島→2012年浦和)などが、移籍後も期待に応える成果を上げ、さすがの手腕を発揮している。

 あえて日本人監督を挙げるとすれば、西野朗監督(2001年柏レイソル→2002年ガンバ大阪)や長谷川健太監督(2017年G大阪→2018年FC東京)が、それに近い事例になるだろうか。

 あるいは、1年のブランクを挟みはしたが、岡田武史監督(2001年コンサドーレ札幌→2003年横浜F・マリノス)は、J1昇格が目標のクラブからJ1優勝が目標のクラブへと、わかりやすくステップアップしていった例かもしれない。

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