前田大然が世界的ストライカーになるために。J最高記録でも物足りないこと

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 木鋪虎雄●写真 photo by Kishiku Trao

 前田大然(横浜F・マリノス、23歳)は、Jリーグの日本人ストライカーとしていま、最も注目を浴びるひとりだ。

 今シーズン、前田はすでに6得点を記録。J1得点ランキングで、アンデルソン・ロペス(コンサドーレ札幌)、レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)、大久保嘉人(セレッソ大阪)らとトップを争っている。先日のU-24アルゼンチン代表戦はケガで招集が見送られたが、東京五輪チームのFWとして有力視されている。

 はたして前田は世界的なストライカーになれるのか?

今季ここまで6得点でランキング2位につけている前田大然(横浜F・マリノス)今季ここまで6得点でランキング2位につけている前田大然(横浜F・マリノス) 前田がピッチを駆けまわる姿は、荒武者の迫力がある。世界的なストライカーで同系統といえば、スペイン代表FWアルバロ・モラタ(ユベントス)だろうか。

 モラタは身体能力に優れ、爆発的なスピードを武器とする。プレスでチームに貢献しながら、裏にボールを引き出し、ピンポイントでゴールを奪う。決してうまい選手ではないが、走力で相手の守備を撓(たわ)ませ、鉄壁を壊せるストライカーだ。

 前田もスプリント力は群を抜いている。4月6日に行なわれたセレッソ大阪戦は、62回ものスプリント回数(時速24キロ以上で1秒以上走った回数)を記録。Jリーグの選手の平均は15~20回であり、並の数字ではない。2019年、松本山雅所属時代に叩き出した自身の53回を大きく更新し、J歴代最高記録だった。

「前からスイッチを入れないと後ろも動けないので。守備でもハードワークしています。チームが勝つために」

 そう前田は言う。裏に抜け出す速さだけでない。プレッシングは鋭く、プレスバックが猛烈で、とにかく走り続けることができる。

 前田の存在によって、昨今の横浜FMの攻撃は「より縦に速い形が増えた」と言えるだろう。ポゼッションを生かして崩すよりも、一気に縦にボールを出し、仕留めるようになった。チームのプレースタイルに変化を及ぼすほどの存在だということか。

 実際、開幕以来の前田のゴールは、爆発的スプリント力を十全に用いている。

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