Jリーグで監督のキャリアアップによる「動き」が活発化しないのはなぜか (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 いずれにしろ、複数のクラブを率いた経験のある日本人監督は数多くいるが、段階的にステップアップしていった監督というと、あまり思い当たらない。

 例えば、現在大分トリニータを率いる片野坂知宏監督。2016年から大分トリニータを率い、クラブをわずか3年でJ3からJ1へと引き上げ、J1昇格1年目(2019年)にして上位争いまで演じている(最終順位は9位)。しかも結果だけでなく、内容的に見ても魅力的なサッカーを展開しており、海外の常識に照らせば、この時点でヘッドハンティングの対象になっていたはずだ。

 もちろん、いい監督はどんどん引き抜けばいい、という単純な話ではない。

 ピッチ外の関係も含め、サッカーは人間がやるものである以上、情は大切な要素だ。ビジネスライクに割り切ることが、すべてにおいて是ではないだろう。前述のローゼ監督にしても、いかにドイツとはいえ、必ずしも好意的に理解してくれる意見ばかりではないと聞く。

 だとしても、現状はあまりに動きが少なすぎる。

 最近はJ2クラブでJリーガーとしてのキャリアをスタートさせ、その後、J1クラブに引き抜かれて活躍する選手が少なくない。ならば監督にも、そんなステップアップがあっていい。

 Jリーグで名を挙げ、ステップアップしていった監督が、ゆくゆくはUEFAチャンピオンズリーグで指揮を執る。そんな姿を見てみたいものである。

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