Jリーグ好調3チーム、スタートダッシュ成功の要因を分析する (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro
  • photo by Kishiku Torao

◆鎌田大地以来の「希望」となる17歳が出現。新生サガン鳥栖の未来>>

 昨季13位の鳥栖は、大卒2年目のFW林大地や、26歳の仙頭啓矢と25歳の小松屋知哉の京都橘高出身のMFコンビなどがいい働きをしているが、目を引くのは金明輝監督が大胆に起用するアカデミー出身の10代の選手たちだ。昨季から17歳のDF中野伸哉、19歳のMF本田風智、18歳のMF相良竜之介などを起用し、育てながらチーム力を高めてきたが、それが今季のスタートダッシュにつながっている。

 印象的なのは、戦い方の幅が広がっている点だ。昨季は4-4-2や4-2-3-1の布陣を使っていたが、今季は開幕戦から3バックを導入している。これについて金監督は、「昨季は降格がなかったので理想を追求したが、今季は現実的に戦いたい」と狙いを明かしている。

 若い選手が多いなかで戦い方に幅が持てるのは、金監督が長くアカデミーで指導してきたことも要因だろう。鳥栖のアカデミーはボールをしっかりつなぎ、ハードワークをするサッカーを徹底していて充実しているが、そこからトップチームに昇格した選手たちと金監督との間に、厚い信頼関係が構築されている点も見過ごせない。

 サッカーは名前や年齢でするものではない。鳥栖の選手たちが若く、全国的には無名ということで侮ってかかると、どこのチームも鳥栖に痛い目にあわされるはずだ。

 好調なチームが見えてきた一方で、昨季2位のガンバ大阪にとっては、厳しいシーズンの幕開けになってしまった。ゼロックス・スーパーカップで川崎に敗れ、開幕戦ではヴィッセル神戸に足元をすくわれて、今季の公式戦は2連敗スタート。

 立て直しを期した矢先に、選手やスタッフの新型コロナウイルス感染が判明し、第2節から第6節までの5試合と、ACLの兼ね合いで前倒し開催の予定だった第11節の合計6試合が『試合前中止』となった。

 新型コロナの感染リスクは全チームが同じように抱えているものだが、実際に起きると苦しさしかない。試合中止分は代替日程が組めなければ0-3での不戦敗になるのだが、今季はACLも戦うG大阪にとっては6試合も新たに試合を組み直すのは容易ではない。仮に6試合すべてで不戦敗になれば、4チームが降格となるリーグ戦で大きなハンディを背負うことになる。

 なにはともあれ、試合ができる環境を取り戻すことに集中してもらいたい。J1の20チームがすべて揃って、全試合が行なえる日が来ることを願っている。

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