鎌田大地以来の「希望」となる17歳が出現。新生サガン鳥栖の未来
「新しいサガン鳥栖」
今シーズン、チームを率いた金明輝監督は、そのプランを推進してきた。端的に言えば、自分たちがボールを握り、運び、能動的に試合を動かす。そのために、トレーニングで選手ひとりひとりの技術詳細を高めてきた。
「今シーズンは攻撃的にやりたい、とスタートして。パワーを持って、ゴールに迫る回数も多くという積み上げはある程度、表現できたと思っています。相手を押し込み続ける、新たなサガン鳥栖を形にしていきたい」(金監督)
それは逆説的表現をするなら、過去のサガン鳥栖との訣別だ。
かつての鳥栖は走力の消耗戦で勝り、激しく球際を戦いながら、ハイボールの強みを見せた。J2からチームを引き上げ、J1の常連にした英雄、豊田陽平が前線に君臨。終盤の粘り強さと迫力は、鳥栖の伝統だ。
しかし時代はひとつの終焉に向かいつつある。J2時代からチームをリードしてきた竹原稔社長が退任を発表。フェルナンド・トーレスの獲得やルイス・カレーラス監督の招聘などで話題を呼んだが、バブルが弾け、莫大な負債が膨らんでいた。
2020年シーズン、新しいサガン鳥栖の形は見えたのか。
今季14試合に出場、圧倒的な存在感を見せた17歳の中野伸哉(サガン鳥栖) 12月19日、駅前不動産スタジアム。J1最終節、鳥栖はホームに大分トリニータを迎えている。前半から鳥栖は主体的にボールを繋ぎ、運び、優勢だった。その点、シーズンの成果が見えた。
「練習から意識して、パスコントロールと基本技術を高めてきて、ひとりひとり、細かい積み重ねで成長できたかなと思います。どこが危険で、どこで前に行くべきか、判断のところも上がってきました。その証拠に、自分はワンタッチも増えてきた。成長を突き詰めていきたいです」(鳥栖・松岡大起)
自分たちのペースのときは、鳥栖はリーグ上位チームと比べても遜色ないサッカーをするようになった。
ところが、受け身に回ったときに脆さが出た。単純な球際の強度で劣り、いとも簡単にやられてしまう。前半32分の失点シーンは象徴的だった。自陣ゴール前で与えたスローイン。なんでもないプレーのはずだったが、ペナルティエリア内のFWのポストプレーを2人で挟み込みながら、相手に拾われ、一撃を食らっている。
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