大久保嘉人のゴール能力を佐藤寿人も絶賛「サッカーIQが相当高い」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 プロデビューを果たしたクラブに15年ぶりに復帰した38歳のゴールハンターは、開幕戦での先制点を皮切りに、川崎戦でも2ゴールをマーク。そしてこのFC東京戦でも先制ゴールを奪うと、アシストも記録した。3試合で4ゴール1アシストと、全6点中5点に絡んでいるのだ。

 開幕前は期待感が薄かった。2017年に川崎からFC東京に移籍して以降、そのキャリアは下降線を辿っていたからだ。2019年はジュビロ磐田でわずか1得点。昨季はJ2の東京ヴェルディでひとつもゴールを奪えなかった。C大阪への復帰は「引退への花道」と見られていたが、そんなイメージを払拭する驚きの活躍である。

 FC東京戦で決めた先制ゴールも、ストライカーとしての能力がさびついていないことを証明するものだった。DFの背後に隠れ、右サイドからボールが送り込まれる瞬間に前に入り、GKの手前で頭を合わせた。しかも、「ボールをしっかり当てると外すという想いがあったので、ちょっとでも触ってゴールに吸い込まれればいいと思った。そのとおりになってよかった」と、イメージも完璧だった。

 このゴールを見ながら思い出されたのは、開幕前に聞いた佐藤寿人氏の言葉だ。

「本能的と見られているけど、嘉人はサッカーIQが相当高い。どうやって動き、どうやって味方とプレーを共有していくのか。オフ・ザ・ボールの動きに注目すると、嘉人の頭のよさがわかると思いますよ」

 相手と駆け引きし、味方とイメージを共有しながら、ジャストなタイミングで動き出してゴールを仕留める。判断、技術、そして経験則がもたらした、J1歴代最多得点者の真骨頂とも言えるゴールだった。

 それにしても、J2でも点を決められなかった大久保がなぜ、J1の舞台でゴールを量産できているのか。

「できすぎかなと思います」と本人は謙遜するが、「1試合1試合が勝負という感じで試合に入れている」という危機感が身体を突き動かしているのだろう。ダメなら、引退。そんな想いを胸に秘め、今季の大久保はピッチに立っているのだ。

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