名古屋に大量補強の成果。猛攻を浴びても楽しむカテナチオのエッセンス
「名古屋(グランパス)は資金力があるクラブで、質の高い選手を数多く揃えている。守りが堅く、強いチーム。我々は彼らを相手に互角に戦い、チャンスを作ることもできたが......」
試合後、コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督は相手に敬意を表し、自軍の健闘を称えた。その証言は端的に試合を表わしていた。
3月6日、豊田スタジアム。名古屋グランパスは本拠地に、開幕戦を勝利で飾った好調の札幌を迎えている。名古屋は柿谷曜一朗、齋藤学、長澤和輝、木本恭生などJ1の有力選手を次々と補強。2021年シーズンは優勝候補の一角を担い、コロナ禍の入場制限がある中でも1万人近いサポーターの後押しを受け、優勢に試合を進めるはず、だった。
コンサドーレ札幌戦で決勝ゴールを決めた相馬勇紀(名古屋グランパス) 前半、わずかながら優位に立ったのは、アウェーの札幌のほうだった。
札幌はペトロヴィッチ仕込みのマンマーキングで激しく寄せ、息もつかせない。名古屋のビルドアップ分断に成功。サイドからの果敢なカウンター攻撃で、何度も守備陣を崩しかけた。
名古屋は自慢の守備の堅さでそれをどうにか凌いでいる。クロスに対しては、丸山祐市や米山拓司などが堅実に対応。自陣での不用意なパスミスからショートカウンターを喰らった場面では、ディフェンスがコースを限定しながら、守護神ランゲラックがニアに打ち込まれたシュートを確実に弾き出した。
「前半は、相手の勢いというか、マンツーマンに手こずりました。ただ、スカウティングで『90分は持たない』ということだったので、耐えることはできました。欲を言えば、もう少し自分たちがボールを持って試合をコントロールできたらよかったのですが」(名古屋・中谷進之介)
名古屋は守備にまわっても落ち着き払っていた。各選手に、トレーニングからの論理的な裏付けがあるのだろう。崩れそうになっても、ことごとくカバーする選手がいた。たとえプレーさせても、自由を与えていない。攻められて動揺が生じず、むしろ楽しんでいるようでもあった。カテナチオの国、イタリアのエッセンスが濃厚に見えた。
1 / 3