2021.02.15

有望な若手を次々と引き抜かれ…。ヴェルディ永井秀樹監督のジレンマ

  • 会津泰成●取材・文 text by Aizu Yasunari
  • 写真提供:東京ヴェルディ

永井秀樹 ヴェルディ再建への道
トップチーム監督編(20)

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 永井秀樹体制2年目だった昨シーズンの成績は、ファン、サポーターにしてみれば満足のいくような結果ではなかったが、一方でユースから昇格したばかりの選手を複数スタメンで起用するなど大胆な策を打ち続けた。ある試合では若手選手中心で育成出身の8人を起用するなど、目の前の勝利を目指すと同時に、未来の東京ヴェルディを背負う人材の育成に力を注いだ。その成果として2020シーズンJリーグ最優秀育成クラブ賞を受賞した。

 そんな永井ヴェルディの象徴的な存在が、ユース監督時代から指導し、トップチームに昇格した今シーズンは新人ながら41試合に出場した藤田譲瑠(じょえる)チマだ。今や将来の日本代表候補とまで期待されるようになったものの、藤田はJ1に昇格した徳島に移籍が決まった。さらに、同じく永井が現役時代から期待し続け、昨シーズンは技術にプラスして逞(たくま)しさを身につけた生え抜きの井上潮音(しおん)も、J1ヴィッセル神戸に移籍することになった。

10年ぶりに東京ヴェルディに復帰を果たした富澤清太郎――未来のヴェルディを見据えて若い選手を育てても、他チームに引き抜かれてしまうジレンマはないですか?

 潮音とジョエル(藤田)の移籍は想定外だった。ふたりとも未来のヴェルディを担う存在なので、多少のミスは目を瞑(つむ)り経験を積ませることを最優先して起用してきた。期待に応えてくれて、技術だけではなく、心も逞しく成長した。

 ようやくこれから、というタイミングで揃っていなくなる痛手は計り知れない。
ただ、自分が監督に就任してから最初にキャプテンに使命した(渡辺)皓太が横浜F・マリノスに、昨シーズンキャプテンに指名した(藤本)寛也も海外移籍していたので、若い主力選手が活躍した途端に移籍してしまう事態は、想像できることではあった。

 J1クラブと比較して資金力は限られるので、これからも同じようなことは起きると覚悟している。とにかく決まった以上は、潮音とジョエルの成功と幸せを心から願いたい。複雑な心境は間違いないが、彼らが活躍してくれることが我々の価値を上げることにもつながると考えるようにしている。