現役のオシムチルドレン、水本裕貴。35歳の今も忘れない名将の声 (2ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

現在も選手として、町田ゼルビアでプレーする水本(写真:町田ゼルビア提供)現在も選手として、町田ゼルビアでプレーする水本(写真:町田ゼルビア提供) 結果は2-2の引き分けに終わったが、この試合に心を揺さぶられた高校3年生は、もともと練習参加した際に好感触を得ていたこともあって、ジェフと契約することに決める。

「選手のレベルはもちろん高かったんですけど、練習内容も、タッチ制限があったりしてレベルが高く、高校とは全然違った。こんな練習を毎日こなせば成長できるんじゃないかと思いました」

 2004年シーズンから晴れてジェフの一員となった水本の、指揮官に対する第一印象は「とにかく大きい人だな」というものだった。さらにイビチャ・オシムのもとでトレーニングを重ねていくうちに、「よく見ている人」という印象が足されることになる。

「そこまで多くを語る人じゃないんですけど、いろんなことを見ているというか、見られている感じがありました。選手の言動や様子、プレーの細部までじっくり観察していて。ちゃんと見てくれているから、練習でいいプレーをすれば、試合に使ってもらえる。そういうことは1年目から感じていましたね」

 最初は練習についていくのが精一杯だったルーキーにデビューの瞬間が訪れたのは6月20日、アウェーの大分トリニータ戦だ。

「コーチの小倉(勉)さんから、試合に向かうバスの中で『もしかしたら、途中から(出場が)あるかもしれない』と言われたんです。そうしたら試合中、巻(誠一郎)さんがケガをして、急きょ出場することになった。最初はボランチに入り、サイドハーフに移って、最後はまたボランチを務めた覚えがありますね」

 シーズン終盤は出場機会が急増し、10月15日のガンバ大阪戦から4試合連続してスタメン出場を飾った。ピッチに立つ時間が長くなるにつれ、水本はあらためてオシムの凄さを感じずにはいられなかった。

「オシムさんの練習は試合と同じ90分なんです。だから10時から始まったら11時半には終わる。その間、100%の力を出し切るように設定されていた。しかも、練習でやったシチュエーションが、試合で次々と起こるんです。あ、これ、練習でやったなって」

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