オシムジャパンのコーチだった小倉勉の驚き。間近で見た選手の進化 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 その効果は絶大だったという。

「チームの得点王でも怒られるんだから、自分が走らないでどうするんだ、という雰囲気になって、ピリッと締まりましたから。ヨンスも新鮮だったんじゃないですか。彼が監督になったあとに話す機会があったけど、『最も印象に残っている監督はオシムさんだ』と言っていましたから」

 選手の成長を間近で見られたのも貴重な経験だったという。水本裕貴や水野晃樹といったルーキー、羽生直剛、巻誠一郎、佐藤勇人といった20代前半だけでなく、ベテラン選手も伸びていく様子は、いい意味での驚きだった。

「斎藤大輔はセレッソ大阪から2002年の途中でやって来て、オシムさんが監督に就任した時は30歳くらい。いい年齢だったんですけど、チャンスを与えられて伸びていった。あれくらいの年齢になっても学ぶ姿勢があって、体のケアをしっかりやれば、十分成長できるんだなって。彼自身、『引退しそうだなと感じていた年齢から、プラス数年できた』と言ってましたね」

 むろん、学ぶ姿勢が大事なのは選手に限った話ではない。

 指導者も学び続けなければならない――。

 それこそ、オシムから学んだ最も大切なことだった。

「あれだけの経験と実績を積んでいるのに、オシムさんには『このサッカーがすべてだ』という考えが一切ないんです。サッカーは時代とともに進化していくし、自分たちの戦力や相手によっても変化させないといけない。だから『毎日、ヨーロッパのトップレベルの試合を見て勉強しろ、分析しろ』と。オシムさんはスタッフミーティングで必ず、『昨日のあの試合、見たか』と聞いてくるんです。『あの守備のシーン、よかったよな』って。だから、必死になって海外サッカーの試合を追いかけていましたね(笑)」

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