オシム・ジェフは休みなしの定説に当時のコーチが反論。休息はあった (4ページ目)

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi

 もっとも、小倉は「いや、一応、明日はこんな練習をするつもりだ、という話はしてくれるんですよ」と補足する。

「ただ、天候だとか、選手のコンディションに合わせてメニューは変わるし、そのメニューをしっかりこなせれば、どんどん次の段階に進んで、できなければ繰り返す。人数や環境、状態に合わせて変化させていくわけです」

 どのチームであってもゲーム形式の練習にコーチが人数合わせのために参加することはあるが、ジェフではヘッドコーチの小倉やコーチの江尻篤彦、フィジカルコーチの松本良一までもが練習にしょっちゅう駆り出された。それだけではない。ミスをすれば、選手と同じようにオシムに怒られ、走らされることもあった。

 だが、小倉にネガティブな感情は一切なかった。

「オシムさんは事細かに説明なんてしないから、最初の頃は意図がわからなかったんだけど、選手と一緒になって練習をこなしたからこそ理解が早まったし、選手たちに噛み砕いてアドバイスもできた。それに選手たちも、コーチが一生懸命走っているんだから、自分たちもやらなきゃ、という雰囲気になりましたから。ただ、常に頭と体をリフレッシュさせておかないと、我々も付いていけない。だから、2部練習の時は、疲労を回復させるために我々コーチも選手と同じように昼寝してましたよ(苦笑)」

 当時のジェフはオフがないことでも知られていた。ある日、「オフをもらえるように交渉してこい」と先輩たちに言われたキャプテンの阿部がオシムのもとを訪ねると、「引退したら十分休めるし、現役生活は短いんだから、練習できるうちはやったほうがいい」と却下された。阿部が言わされていることを察知したオシムは「休みたいやつがいるなら、休ませてやるから、直接言いに来い」とも言った。

「これはね、オシムさんのオフの考え方が独特なんですよ(笑)。土曜日に試合をした場合、日曜日は午前中にリカバリーを行ない、月曜日の練習を夕方に設定する。そうしたら24時間以上、空くじゃないですか。『その間に体を休めればいいじゃないか』と。『夕方から練習すると、夜眠れない』と選手たちが訴えれば、『だったら、朝寝ればいいじゃないか』と。

 あと、2部練習もよくやっていたんですけど、9時半から始まって11時に終わって食事して、いったん帰宅して休んで、17時くらいからまた練習が始まる。『夜飲みに行こう』とか考えているから嫌なのであって、サッカーにすべてを注いでいるのであれば、練習して、休息を取って、練習するのが最も合理的だろうと。もう、おっしゃるとおりで」

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